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薬物ガイド

GLP-1で落ちた体重、その内訳に筋肉はどれくらい含まれるのか

ウゴービやマンジャロで落ちた体重のうち、除脂肪量はおよそ25–40%。STEP 1とSURMOUNT-1のDXAデータ、日本での価格、筋肉を守る具体策を2026年4月時点で整理します。

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本記事は情報提供およびライフスタイル参考を目的としており、医学的助言ではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

GLP-1で落ちた体重、その内訳に筋肉はどれくらい含まれるのか

GLP-1で落ちた体重、その内訳に筋肉はどれくらい含まれるのか

ウゴービを半年続けて 8kg 落ちた。数字だけ聞くと、全部が脂肪のように感じます。 でも体組成計に乗ると、そう単純な話じゃないんですよね。

NEJMに載ったSTEP 1では、セマグルチド (semaglutide) で 68週 後に −14.9% 減った参加者のうち、除脂肪量の目減りが全減量の 約40% を占めていました。 8kg 落ちたうち、3kg 前後は筋肉や水分も含む除脂肪量ということです。

2026年のGLP-1治療で、ここがいちばん語られないまま残っている部分です。

数字の出どころを2つの臨床試験で確認する

GLP-1の筋肉データは、3つの大規模試験を見ておけば話が早いです。 NEJM 2021のSTEP 1、NEJM 2022のSURMOUNT-1、そして追跡 104週 のSTEP 5。

STEP 1は参加者 1961人、セマグルチド 2.4mg68週 投与。平均減量は −14.9%。 DXAサブ研究の内訳は、脂肪量 −19.3%、除脂肪量 −10.4%。 全減量に占める除脂肪量の比率は 約40%。Harvard Science Reviewも2026年2月の「The GLP-1 Aftermath」でこの数字を引いています。

SURMOUNT-1はチルゼパチド (tirzepatide) 15mg72週、参加者 2539人 で評価。 平均減量は −20.9% と一段大きい。 ポイントは、脂肪量と除脂肪量がDXA上でおよそ 3:1 の比率で減ったところです。 除脂肪量の損失は全体の 約25% にとどまり、セマグルチドより筋肉の残り幅が広い、という読み方になります。

NEJM 2021 (Wilding et al.) 補足解析より:「体重減少のうち除脂肪量が占める割合は、運動指導の有無で大きく変動した。加齢性サルコペニアの観点でも示唆的である」

長期データのSTEP 5は 104週−15.2%。減量そのものは維持できていました。 ただし筋トレを併行しなかった群では、筋肉量の目減りが止まらない。 2年 経つと、運動を入れた群と入れない群で、筋力にそこそこの差が出てきます。

もうひとつ前提として、除脂肪量には筋肉だけでなく、水分、骨、内臓も含まれます。 DXAの数値をそのまま「筋肉が 10% 減った」と読むと、実態より悲観的になりがちです。 急な減量の初期は水分の動きが大きく、その後のフェーズで骨格筋の実質的な低下が乗ってくる。 3カ月の数字だけで判断せず、6カ月 以上のトレンドで見るのがいいです。

試験別に並べると、薬ごとの色が見えてくる

一覧にして比べます。

試験分子期間平均減量除脂肪量損失の比率
STEP 1semaglutide 2.4mg68週−14.9%約40%
STEP 5semaglutide 2.4mg104週−15.2%30–40%
SURMOUNT-1tirzepatide 15mg72週−20.9%約25%
Retatrutide P2retatrutide48週−24.2%20–25%
REDEFINE-1CagriSema68週−22.7%35–40%

retatrutideとCagriSemaは研究段階の数字で、日本ではどちらも未承認です。 目を引くのは、「いちばん体重が落ちる薬 = いちばん筋肉が残る薬」ではないという点。 CagriSemaは減量幅が大きいのに、筋肉が残る比率はSTEP 1とほとんど変わりません。

薬を選ぶときは、減量の総量と、そのうち何割が脂肪かを、別の軸で見たほうがいいです。

除脂肪量の減り方には時間差もあります。 導入初期の 4–8週 は水分とグリコーゲンが主に動くフェーズで、体重の下がり方が派手に見える時期。 そこから脂肪と骨格筋の減少が本格化して、6カ月 を過ぎるあたりから筋肉の比率がじわっと増えるパターンが多い。 「初月で 3kg 落ちたから、半年後は 18kg 減」という計算は、だいたい外れます。 実際は緩やかに逓減するカーブで、筋肉の消耗がどこで追いついてくるかに個人差が出ます。

セマグルチドとチルゼパチドの差を、体感に落とすと

ざっくり整理するとこうです。

  • セマグルチド系:落ちた体重の 約60%が脂肪、約40%が除脂肪量
  • チルゼパチド系:落ちた体重の 約75%が脂肪、約25%が除脂肪量(およそ 3:1)。

数字の差は小さく見えます。ただ、半年・一年と積み重ねたときの体感は、見た目より違う。 80kg の人が 15% 落ちた場合、減量は 12kg。 セマグルチドで約 4.8kg、チルゼパチドで約 3kg が除脂肪量にあたります。 差は 1.8kg。これが握力や階段の上りやすさに効いてきます。

ひとつだけ注意。これは薬の優劣の話ではなく、同じ 15% を落としたときの内訳の違いです。 チルゼパチドは減量幅そのものが大きい薬なので、絶対量で見ると除脂肪量の損失も小さくはありません。

日本で買える薬を整理する

2026年4月時点の日本での位置づけです。

商品名一般名日本での承認主な用途
ウゴービsemaglutide 2.4mg2023年承認肥満症
オゼンピックsemaglutide承認済2型糖尿病
リベルサスsemaglutide 経口承認済2型糖尿病
マンジャロtirzepatide承認済2型糖尿病
サクセンダliraglutide 3.0mg国内未承認個人輸入扱い

ウゴービは保険適用のハードルが高いです。 BMI 35 以上、または BMI 27 以上で高血圧・脂質異常症・2型糖尿病などの合併症が 2つ 以上。 加えて食事・運動療法を 6カ月 続けた履歴が前提。 自由診療だと月 4–8万円 の幅で、クリニックによって価格差が大きいです。

マンジャロは2026年4月時点で、肥満症の適応はまだ取れていません。 糖尿病の保険診療で処方するか、ダイエット目的なら自由診療で月 6–10万円 前後。 サクセンダは国内未承認です。個人輸入ルートには偽造品と健康被害のリスクがあり、PMDAも繰り返し注意喚起を出しています。

日本独自の事情として、ウゴービを保険で出してくれる施設はまだ限られます。 日本肥満学会の認定施設、あるいは肥満症治療の経験がある内分泌・代謝内科が中心。 処方を続けるには 3カ月 ごとに体重・血圧・採血で合併症をチェックするのが前提です。 「美容クリニックで楽に始めたい」気持ちと、「長期の合併症管理が要る」という医療側の考え方は、実は方向性がずれています。 そこを理解したうえで、長く通える施設を最初から選んだほうが、あとで楽になります。

筋肉を落としやすいのは、こういう人

データから見える、ハイリスクのプロフィールです。

  • 65歳 以上で、もともとサルコペニア傾向のある人。
  • 筋トレや有酸素の習慣がない人。
  • 1日のタンパク質摂取が 60g を切っている人。
  • 短期間で BMI5 以上落とした人。
  • 高用量のまま運動を追加しない人。

特に、女性で筋トレ歴ゼロという組み合わせは要注意です。 握力が落ちはじめると、瓶のフタが開かない、買い物袋が重い。 体重計の数字だけ追っていると、半年後に体組成計で現実を知ることになります。

30代後半の女性、ウゴービ4カ月:「体重は 7kg 落ちて嬉しかったんです。ただ、ペットボトルのキャップが固く感じるようになって。先生に体組成を測ってもらったら、除脂肪量が 2.5kg 減っていました。プロテインと軽いスクワットを始めたのはそこからです」

この体感のズレ、SNSでもよく流れてきます。 違和感に気づくのは、だいたい 3–4カ月 目あたり。 そこで対策を入れる人と入れない人で、1年 後の体組成はかなり開きます。

日本の生活動線で考えると、筋肉の衰えが最初に出る場面ははっきりしています。 駅の階段で息が上がる、片手で荷物が持ち上げられない、床から立つときに手をつく。 電車とエスカレーター中心の都市生活は、日常の負荷がもともと軽い。 GLP-1で体重が落ちていくあいだ、意識して負荷を足さないと、筋肉を使う機会自体がなくなります。

筋肉を守る基本セット、2026年版

ESPEN 2022、ISSN 2024、AND 2024の肥満治療ガイドを束ねると、押さえどころは5つです。

  1. タンパク質:体重 1kg あたり 1.2–1.6g/日。70kg なら 84–112g
  2. 1食あたりの分配:朝・昼・夕で 25–40g ずつ。1食に偏ると合成効率が落ちます。
  3. 抵抗運動:週 2–3回、主要な筋肉群をひと通り。1回 30分 で十分です。
  4. 有酸素:1日 9000–10000歩。歩くこと自体が筋肉の目減り抑制に効きます。
  5. クレアチン (creatine monohydrate):1日 3–5g。筋トレと併用すると除脂肪量維持に効くというデータがあります。

体重別のタンパク質目標はこのあたりです。

体重1日の目安1食あたり
50kg60–80g20–27g
60kg72–96g24–32g
70kg84–112g28–37g
80kg96–128g32–43g
90kg108–144g36–48g

70kg の人が1食 30g を狙うとすると、鶏胸肉 120g、または納豆 1パック と卵 1個 と豆腐 半丁 の組み合わせ。 和食の定番で組み立てると、意外と届きません。 朝がごはんと味噌汁だけだと、10g を切る日も出てきます。 魚や卵を意識して足す設計が、いちばん続きやすいです。

腎機能に持病がある人は、タンパク質を増やす前に主治医に相談してください。 特にeGFRが 45 を切るあたりでは、増量自体がリスクになり得ます。

抵抗運動のハードルを下げるのも大事なところです。 週 3回 のジム通いが理想でも、続かなければ意味がない。 自宅でスクワット 15回 × 3セット、壁に手をついた腕立て 10回 × 2セット、ペットボトルを握ってのサイドレイズ 15回 × 2セット。 これだけでも、週 2回 のペースで続ければ、DXA上の骨格筋量に差が出てきます。 ジムに行けない週も、家でゼロにしない。そのくらいの運用が現実に回ります。

受診のとき、先生に聞いておきたいこと

診察室で話すテーマをリスト化しておくと、時間の使い方が変わります。

  • いまの用量で、筋トレを週 何回 入れるのが現実的か。
  • タンパク質を 1.2g/kg まで増やして、腎機能の数値に問題はないか。
  • 3–4カ月 ごとにDXAやインピーダンスで体組成を見る場合、自費でいくらか。
  • 併用している他の薬で、筋肉量に影響しそうなものはあるか。
  • 減量ペースが速すぎるとき、用量を据え置きにする選択はあるか。
  • 終了後の維持フェーズで、筋肉を守る計画はどう組むか。

初回の受診で全部聞く必要はありません。 体組成のフォローを話題に出すだけでも、診療の方向はけっこう変わります。 DXAは肥満外来や一部の人間ドック施設で測れます。

処方前に確認しておきたいチェックポイント

ウゴービもマンジャロも、最初の受診で整理したいのはこの5つです。

  • 自分の BMI と合併症が、どの適応にあたるか。
  • 保険診療になるのか、自由診療になるのか。
  • 月の自己負担はだいたい幾らか。
  • 処方を継続してくれる診療科はどこか。
  • やめどきと、やめた後のフォロー体制はどうなっているか。

日本でGLP-1を扱う診療科は、内分泌・代謝内科、糖尿病内科、肥満外来、一部の美容皮膚科です。 肥満症の保険診療を続けて診てくれるのは、大学病院系と、肥満外来を構えた専門クリニックあたり。 美容皮膚科の自由診療は価格が分かりやすい反面、合併症の管理は薄くなりがち。 糖尿病や高血圧がある人は、内科併診が向いています。

個人輸入で先回りするのは避けてください。 偽造品のセマグルチドが市場に出ていて、副作用が出ても国内の救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象外です。 値段が安く見えても、トータルでは割に合いません。

継続費用の見積もりも、最初の段階で具体化しておくと判断がぶれません。 ウゴービの自由診療が月 5万円 として、1年60万円。 これにDXAの定期測定 年2回1–2万円、プロテインや食材の追加で月 5000–10000円。 合計すると、年間で 70–80万円 くらい。 5年 続ける前提なら 300万円 を超えてきます。この数字を家計で受けとめられるかを、始める前に確認しておく価値があります。

日本人の体格で読み直すと、数字の意味が変わる

STEP 1とSURMOUNT-1の参加者は、平均 BMI35 を超える層が多めでした。 日本の肥満外来に来る人は、平均 BMI30 前後。女性なら 28–32 の帯も目立ちます。 同じパーセントの除脂肪量損失を当てはめると、絶対量としての筋肉減少は米国データより小さく見えます。

ただし、出発点の筋肉量そのものが少ない。 「同じ 2kg の除脂肪量損失」でも、米国の参加者と日本人女性では意味が違ってきます。 身長 158cm、体重 65kg の人が 2kg 筋肉を失うと、握力や階段昇降で体感が出てくる。 海外データを鵜呑みにせず、自分の出発点で換算する価値はここにあります。

50代男性、マンジャロ8カ月、BMI 31 → 26:「体重は順調に落ちました。半年経った頃、妻に『姿勢が悪くなった』と言われて。体組成計で測ったら、骨格筋量が 4kg 近く減っていました。プロテインを 1日2回 に増やして、家でダンベルを始めて、3カ月 で半分くらいは戻った感覚です」

DXAの自費料金は、施設によって 5000–10000円 ほど。 インピーダンス (BIA) なら、無料の体組成計を置いているジムでも測れます。 精度はDXAに劣るものの、3–4カ月 ごとに同じ機械と同じ条件で測れば、トレンドは十分に追えます。

和食でタンパク質 100g/日 を狙うのは、意識しないと届きません。 朝に卵 2個 と納豆 1パック(合計約 20g)、昼に鮭塩焼き定食(約 25g)、夕に鶏胸 120g と豆腐(約 35g)で、ようやく 80g。 プロテインドリンク 1杯 を足して、やっと 100g。これが日本の食卓での現実的な組み立てです。

続けるか、やめるか、その先の維持フェーズ

STEP 4のRubinoら (JAMA 2021) の解析では、20週 の導入後にセマグルチドを中止すると、1年 以内に減量分の 約2/3が戻る と報告されています。 この戻り方には偏りがあります。 脂肪は戻りやすく、筋肉は戻りにくい。 結果として体重は元に近づくのに、体脂肪率は前より高い、という残念な着地になりがちです。

bimagrumab + semaglutideの小規模Phase 2 (JAMA 2024, Heymsfield et al.) では、bimagrumabの併用で除脂肪量の損失が −79% 減ったというデータが出ています。 ただし第3相が動いている段階で、日本での承認時期は未定。 2026年4月時点の現実的な選択肢は、運動と食事の二本柱で守ることです。

維持フェーズに入るとき、用量を半分に落として続けるのか、完全に止めるのか、選択肢は複数あります。 減量幅 15% を達成したら、その水準を保つのにどれくらいの努力量が要るかを、見積もり直す時期。 次の受診で先生に話してみてください。

最後にひとつ。 GLP-1で 15% 落とすこと自体は、もう特別な話ではありません。 2026年の論点は、その 15% のうち何が落ちているかを見える化すること。 そして 5年10年 続けられる生活の形に着地させることです。 60代70代 の自分を予測する指標は、体重計の数字よりも、握力と歩行速度のほう。 そこを軸に治療を組み立てると、結果的にいちばん手堅いです。

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