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薬物ガイド

セマグルチド vs チルゼパチド 2026:日本の処方と9市場ブランド早見

ウゴービとマンジャロ、日本ではどっちがどこで使える薬なのか。SURMOUNT-5 が直接対決で 出した −20.2% 対 −13.7% を、保険・自費・未適応まで含めて整理します。

21 min read

本記事は情報提供およびライフスタイル参考を目的としており、医学的助言ではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

セマグルチド vs チルゼパチド 2026:日本の処方と9市場ブランド早見

セマグルチド vs チルゼパチド、日本で読むとどう見えるのか

2025 年に SURMOUNT-5 の結果が出て、この 2 剤の比較はだいぶ話しやすくなりました。72 週の直接対決で、チルゼパチドは平均 −20.2%、セマグルチドは −13.7%。相対差でおよそ 47% の開き。これまでは STEP と SURMOUNT を別々に眺めるしかなかったので、同じ条件で 2 剤を並べた数字が出た意味は大きいです。

ただ、この数字をそのまま日本で受け取ると、少し話がずれます。

ニューヨークなら「Wegovy vs Zepbound」。ソウルなら「위고비 vs 마운자로」。東京だと ウゴービはあるけれど、チルゼパチドの肥満症ブランドはまだ日本に入っていない。同じ 2 分子の話をしていても、クリニックの窓口で出てくる選択肢が国ごとに違う。この記事は、そのズレを整理します。薬理の違い、SURMOUNT-5 の読み方、そして 日本で処方箋に実際に書かれる薬の名前と値段 まで。

2 つの分子がやっていることは、少し違う

セマグルチド(semaglutide)は、GLP-1 受容体だけに結合します。GLP-1 は食後に腸から出るホルモン。これを真似ることで、胃の排出を遅らせ、視床下部の食欲シグナルを静かにして、血糖に応じたインスリン分泌を助ける。レバーは 1 本、そこをぐっと引く設計です。

チルゼパチド(tirzepatide)は GIP 受容体と GLP-1 受容体の両方に結合します。GIP もインクレチン系のホルモンで、単独ではそれほど強い減量レバーではないのですが、GLP-1 と組み合わさると話が変わる。インスリン感受性の改善、脂質代謝のシフト、満腹シグナルの増強。機序の細かいところはまだ詰め切れていない部分もありますが、臨床結果にははっきり差が出ています。

SURMOUNT-5 以前から数字が開いていた理由もここ。STEP 1(NEJM 2021)ではセマグルチド 2.4 mg 週 1 回、68 週で −14.9%。SURMOUNT-1(NEJM 2022)ではチルゼパチド 15 mg 週 1 回、72 週で −22.5%。試験ごとに対象集団や期間が微妙に違うので直接比較には注意が要りますが、それでも 7–8 ポイントの差。

薬理で読むなら「セマグルチド vs チルゼパチド」。制度で読むなら「ウゴービ vs マンジャロ(肥満は未適応)」。混ぜないほうが後で楽です。

SURMOUNT-5 が実際に示したこと

被験者 751 人、糖尿病のない肥満成人、72 週。チルゼパチド 10 または 15 mg の最大忍容量 vs セマグルチド 2.4 mg。結果は −20.2% vs −13.7%

体重 90 kg なら、セマグルチドで約 12 kg 減、チルゼパチドで約 18 kg 減。体重 70 kg なら、それぞれ 9.6 kg と 14.1 kg。臨床目標が「ベースラインから 10–12% 落とす」なら、どちらでもクリアします。血圧、空腹時血糖、睡眠の質が変わるライン。ただし 20% を超えて落とす水準まで見るなら、SURMOUNT-5 ではチルゼパチド側の達成者が多かった、という読み方になります。

副作用の中止率はどちらも 5–6% 程度で、大きな差はありません。「チルゼパチドの方が減量幅は大きいけれど、忍容性は同じくらい」。現時点の読み方はここに落ち着きます。

日本で実際に処方される薬の名前をそろえる

ここが本題です。海外記事を読んで「じゃあ日本でもマンジャロで肥満治療できるのか」と思うと、外します。2026 年 4 月時点の日本はこう。

  • ウゴービ(セマグルチド、週 1 皮下注)— 肥満症で PMDA 承認済み。2023 年 1 月承認、2024 年 2 月発売。ただし 保険適用には BMI や併存症の厳しい条件 があり、多くのクリニックでは実質的に自費診療。
  • オゼンピック(セマグルチド、週 1 皮下注)— 2 型糖尿病のみ。肥満目的は適応外。
  • リベルサス(セマグルチド、経口錠)— 2 型糖尿病で 3 mg / 7 mg / 14 mg。飲むタイプのセマグルチドとして美容クリニックで自由診療に流用される例もありますが、本来は糖尿病薬。
  • マンジャロ(チルゼパチド、週 1 皮下注)— 2 型糖尿病のみ。2022 年 9 月承認、2023 年 4 月発売。肥満症での適応は日本では未取得。米国の Zepbound に相当するブランドは日本にはありません。

ここで押さえておきたいのは、オゼンピックとウゴービは同じセマグルチドでも別ブランドという点。美容クリニックが「オゼンピックでダイエット」と書いていたら、糖尿病薬を肥満目的に流用している話です。薬機法・医療広告の観点でも、注意が要る領域。

「マンジャロで痩せた」という X の口コミを見かけても、日本では肥満適応を取っていないので、それは医師の裁量によるオフラベル処方。クリニックによって対応は分かれます。

9 市場のブランド早見表

海外在住の方、出張が多い方、あるいは家族が海外で処方された薬について相談された方向けに、2026 年 4 月時点の整理です。

市場セマグルチド(肥満)セマグルチド(糖尿)チルゼパチド(肥満)チルゼパチド(糖尿)
日本ウゴービ (2024-02 発売)オゼンピック / リベルサス❌ 未承認マンジャロ (2023-04 発売)
米国Wegovy / 経口 Wegovy 25 mg (2026)Ozempic / RybelsusZepboundMounjaro
韓国위고비 (2024-10 発売)오젬픽마운자로 (2024-12 承認)마운자로
中国本土诺和盈 (2024-11 発売)诺和泰穆峰达 (2025 発売)穆峰达
台湾胰妥讚 / WegovyOzempic猛健樂 (2024)猛健樂
香港WegovyOzempicMounjaro (2024)Mounjaro
EUWegovy (2022-01)Ozempic / RybelsusMounjaro (2023-12)Mounjaro
サウジアラビアWegovyOzempicMounjaro (2024)Mounjaro
UAEWegovy (2023-07)OzempicMounjaro (2024)Mounjaro

この表で目に留まる点が 2 つあります。ひとつは 米国だけがチルゼパチドを Zepbound(肥満)と Mounjaro(糖尿)の 2 ブランドに分けていること。日本を含むほかの市場は、マンジャロ系の単一ブランドで両適応を取りに行くか、まだ肥満適応がないか、のどちらか。もうひとつは 日本だけ、チルゼパチドの肥満適応が空欄のまま残っていること。韓国、中国、EU、中東はすでに取得済みで、日本は少し遅れている位置です。

日本で落とし穴になりやすい 5 つのポイント

ここ、けっこう混乱しやすい場所。最初に整理しておきます。

  1. チルゼパチドの肥満適応は日本で未取得。米国の Zepbound の記事を読んで「日本でも肥満にマンジャロを処方できますか?」と聞くと、多くのクリニックで「適応外になります」と返ってきます。
  2. ウゴービの自費価格は月 約 70,000–84,000 円。保険適用が通るのは BMI 35 以上などの条件を満たす専門外来が中心で、多くの受診者にとっては自由診療扱い。
  3. マンジャロの 2 型糖尿病での保険 3 割負担は月 約 7,000–15,000 円。肥満目的での自費処方をしているクリニックもあり、その場合は月 約 20,000–30,000 円が相場。
  4. オゼンピックとウゴービを混同しない。同じセマグルチドでも、処方できる文脈が違います。
  5. リベルサスの肥満向け高用量(米国の経口 Wegovy 25 mg)は日本では未承認。リベルサスは 7 mg / 14 mg までで、位置づけはあくまで糖尿病薬。

用量はどちらも「階段を登るように」増やす

GLP-1 系の薬は、いきなり高用量に入れると胃腸症状で 1 週間以上動けなくなる人が出ます。どちらも 4 週ごとに少しずつ増やすのが基本。

用量ステップ(週 1 皮下)最終用量までの最短
ウゴービ / セマグルチド0.25 → 0.5 → 1.0 → 1.7 → 2.4 mg16 週
マンジャロ / チルゼパチド2.5 → 5 → 7.5 → 10 → 12.5 → 15 mg20 週

チルゼパチドの方が段が 1 つ多い。より高い最終用量まで行くぶん、身体を慣らすステップを増やしている、と読むのが自然です。急ぎたい気持ちはわかりますが、ここを飛ばすと副作用の出方がきつくなる。

増量のタイミングで吐き気や下痢がぶり返すのは、両薬に共通する現象です。体重が止まったと思って用量を上げた直後に、便秘と倦怠感が 1 週間続く。これもよくあるパターン。

副作用の出方、収まり方

STEP 1 と SURMOUNT-1 の 5% 以上の副作用を並べると、こうなります。

副作用セマグルチド 2.4 mgチルゼパチド 15 mg
吐き気約 44%約 29%
下痢約 30%約 21%
嘔吐約 24%約 17%
便秘約 24%約 17%
中止率約 6%約 5%

表だけ見るとチルゼパチドの方が楽そう。ただし外来の実感はもう少し複雑で、増量期の症状はチルゼパチドでも相当出ます。とくに 7.5 mg から 10 mg に上げるタイミングで吐き気が戻ってくる人は多い。8–12 週で慣れる人が多数派ですが、ここで脱落する人もいます。

両薬に共通する、まれだけど押さえておきたい話。

  • 急性膵炎 — 持続する激しい上腹部痛は受診サイン
  • 胆のう炎 / 胆石 — 急な減量でも増える現象。GLP-1 で追加リスク、との報告あり
  • 糖尿病網膜症の増悪(セマグルチドで SUSTAIN-6 の報告あり)
  • インスリンやスルホニル尿素との併用で低血糖
  • 甲状腺髄様癌 / 多発性内分泌腫瘍 2 型(MEN2)の家族歴は禁忌(箱枠警告)

親族に甲状腺髄様癌の方がいる、過去に膵炎をやったことがある。こうした背景があるなら、比較記事を読むより先に医師に伝えてください。判断の分岐点がそこで変わります。

処方前に診察で確認しておきたいこと

診察室で話が早く進むのは、前情報がそろっているとき。スマホにメモして持っていくと便利です。

  • 現在の身長・体重・BMI、ここ 3–6 カ月の体重推移
  • BMI と併存症(2 型糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸)
  • 服用中の薬、とくにインスリン、スルホニル尿素、経口避妊薬
  • 甲状腺の病気や家族歴、過去の膵炎・胆のう手術歴
  • 妊娠予定の有無(妊娠計画がある方は投与中止のタイミング相談が必要)
  • 月にかけられる予算の現実的な上限

診察のときに聞いておくと楽な質問

これ、そのままコピペして使ってもらって大丈夫です。

  1. 私の BMI と併存症で、ウゴービの保険適用は通りますか
  2. 自由診療になる場合の月額はいくらくらいで、用量ごとに変わりますか
  3. マンジャロを肥満目的で処方する方針ですか、それともウゴービに絞りますか
  4. 副作用が強く出た場合、用量を下げる or 薬を変える、どちらの方針ですか
  5. 投与をやめるときは、段階的に減らしますか、それともそのまま終了ですか
  6. 目標体重に到達したあと、維持期は何 mg でどれくらい続ける想定ですか
  7. 来院間隔は月 1 回ですか、オンライン診療は使えますか
  8. 個人輸入した薬を持ち込んだ場合、併用や切り替えの相談は受けてもらえますか

価格の目安(2026 年 4 月時点)

日本円で、標準用量前提の目安です。施設差が大きいので、具体的な金額は各クリニックの料金表で確認してください。

項目日本米国韓国
ウゴービ / Wegovy / 위고비 自費月 約 70,000–84,000 円月 約 $1,349(NovoCare 現金 $499)月 約 210,000–370,000 ウォン
マンジャロ 糖尿病(保険 3 割)月 約 7,000–15,000 円
マンジャロ 自費(肥満オフラベル)月 約 20,000–30,000 円Zepbound 月 約 $1,086(LillyDirect $349–499)마운자로 月 約 250,000 ウォン〜

米国の Zepbound 現金プランや NovoCare の自社直販価格は、正規ルートで自費を払うケースの実質負担を大きく下げる選択肢として機能しています。日本にはこの種の自社直販スキームがまだ入っていないので、同じ分子でも感覚値としては米国の方が安く見える場面がある。そこは押さえておいて損はありません。

個人輸入は勧められない

X や Instagram で「海外通販で安く買えました」という投稿を見かけます。気持ちはわかります。ただ、偽造品の混入、コールドチェーン(冷蔵輸送)の破綻、トラブル時に日本の医師が責任をとれないことは、どうしてもリスクとして残る。2024–2025 年には複数の国で GLP-1 偽造品の摘発が報告されていて、ラベルだけ本物でペン内部が別物、という事例もありました。

月額が気になるなら、まず保険適用の条件に合うかをクリニックで確認し、そのあとで自由診療の見積もりを比較する。この順番の方が安全です。

国内でもオンライン診療対応のクリニックは増えているので、値段だけで個人輸入に振れる前に、正規ルートの選択肢を一度当たってみる価値はあります。

日本の今、まとめるとこう

2026 年 4 月の時点で、日本の読者にとって現実的な選択肢の見取り図。

  • 肥満症で正規ルートで治療したい → ウゴービ。保険適用が通れば 3 割負担、通らなければ月 7 万円台の自費。
  • 2 型糖尿病があり、減量もしたい → 主治医と相談のうえでマンジャロかオゼンピックが候補。どちらも保険適用内。
  • 糖尿病なしで、チルゼパチドをどうしても試したい → 日本では肥満適応がないので、自費オフラベル対応のクリニックを探すか、肥満適応の承認を待つか。
  • 海外で処方された薬を持ち帰ってきた → 必ず日本の医師に見せて、成分・用量・残量を確認してもらう。

そして最後にひとつだけ。この記事の数字は 2026 年 4 月時点の情報です。日本でのマンジャロ肥満適応申請の動きや、新しい経口高用量セマグルチドの承認は、ここから数カ月で変わる可能性があります。受診の直前には、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトで最新情報を確認するのが安心。

比較記事としてここまで整理しておくと、診察室で「どっちがいいですか?」と尋ねる前に、「自分の条件ならどのルートが現実的か」を先に言葉にできます。医師との会話が具体的になるぶん、遠回りは少なくなるはずです。

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