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薬物ガイド

GLP-1の休薬、手術と内視鏡の前にいつ止めるか

ウゴービ・マンジャロ・オゼンピックを使いながら胃カメラや手術が決まったら、注射はいつから止めるか。胃排出の仕組み、薬剤別の休薬日数、日本での適応状況、麻酔科に伝える順番までまとめます。

34 min read

本記事は情報提供およびライフスタイル参考を目的としており、医学的助言ではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

GLP-1の休薬、手術と内視鏡の前にいつ止めるか

GLP-1の休薬、手術と内視鏡の前にいつ止めるか

受付で胃カメラが延期になる朝

火曜の朝8時、人間ドックの内視鏡室。前夜から絶食して、水も4時間前で止めて、準備は完璧のつもり。問診票の「内服中の薬」の欄に、正直に「マンジャロ週1回」と書いた。受付で看護師さんが少し顔を曇らせて、「先生に確認しますね」。5分後、検査は来週に振り替えになりました。

ここ1–2年、内視鏡センターでよく見る光景です。マンジャロやウゴービを打っている人が、胃カメラや大腸カメラの当日に「薬を止めずに来てしまった」と判明して、その場で延期。仕事の有給を1日使って、再調整のために来週もう1日、なんていうケースがじわじわ増えています。

問題は、ご本人の不注意ではありません。多くのクリニックで、ダイエット目的のGLP-1処方時に「手術や内視鏡の予定があるか」を聞かない。一方で麻酔科や内視鏡医のほうは、ここ2年で各国の学会が次々に「GLP-1使用者は休薬してから来てください」というガイドラインを出している。情報の段差が、患者さん側にしわ寄せされている状態です。

2026年5月時点で、ASA(米国麻酔科学会)、ESAIC(欧州麻酔・集中治療学会)、JSA(日本麻酔科学会)、KSA(大韓麻酔通痛医学会)、CSA(中華医学会麻酔学分会)、TSA(台湾麻酔医学会)、香港麻酔科医学院。主要な10の地域麻酔学会のうち9つが、GLP-1の術前休薬を正式に推奨しています。

胃カメラ、大腸カメラ、歯科の鎮静、白内障、美容外科、不妊治療の採卵、減量手術。全身麻酔・深鎮静・中等度鎮静をかける処置はだいたい全部対象です。逆に、鎮静を伴わない局所麻酔の小処置は、原則として休薬不要。線引きは「鎮静で意識が落ちるかどうか」。

なぜGLP-1は手術前に止める必要があるのか

GLP-1受容体作動薬の主な作用のひとつが、胃排出(gastric emptying)の遅延です。食べたものを胃から十二指腸へ送る速度を、薬が物理的に鈍らせる。満腹感が長く続いて食べ過ぎを防ぐ、という痩身効果の正体はここにあります。

手術や鎮静の場面では、これが裏目に出ます。

麻酔導入で意識を落とすと、嚥下反射と咳反射が止まります。胃の中身が食道へ逆流して、気管へ流れ込むと誤嚥性肺炎。普通の人は前夜から絶食すれば胃は空になっているので、この事故はめったに起きません。ところがGLP-1を打っている人は、前夜から絶食しても、朝の時点で胃の中に固形物や濃い胃液が残っていることがある。これが新しい問題でした。

数字で見るとイメージしやすいかもしれません。チルゼパチド(マンジャロ)15mgのピーク濃度時、胃排出速度は通常の約30%まで落ちる——つまり約70%の遅延——という第3相試験データがLillyから出ています。セマグルチドも同等レベル。「絶食したのに胃カメラで食べ物が映る」という事例が、2022年あたりから世界中で報告され始めました。

ASAは2023年6月に最初の正式声明を出して、2024年10月に内容を精緻化、さらに2025年10月には消化器系の学会(AGA・ASGE・SAGES・IFSO・ASMBS)と合同で多職種の更新ガイダンスを出しています。流れとしては「警鐘」から「実装の現実解」へ移ってきた、という段階ですね。

ここでひとつ大事なのは、**休薬を勧めているのは「あなたが弱いから」じゃなくて「薬が効いているから」**という点です。痩せ薬としてしっかり胃を遅らせている証拠であって、副作用というより薬理作用の延長線上の話。罪悪感を持つ必要はありません。

薬剤別、何日前に止めるか

ここが今日の記事のいちばんの実用パートです。多施設の合意ガイドラインを、2026年5月時点の日本市場のブランド名に合わせて整理しました。

一般名・ブランド投与頻度最終投与から処置までの休薬期間
セマグルチド週1回(ウゴービ、オゼンピック)週1回7日以上(直近の注射からまる1週間)
チルゼパチド週1回(マンジャロ)週1回7日以上
デュラグルチド週1回(トルリシティ)週1回7日以上
エキセナチド徐放週1回(ビデュリオン)週1回7日以上
リラグルチド毎日(ビクトーザ、サクセンダ)1日1回当日の朝の投与をスキップ(24時間)
経口セマグルチド(リベルサス)1日1回当日の朝の服用をスキップ
オルフォルグリプロン(Foundayo、米国のみ)1日1回当日の朝の服用をスキップ。減量手術センターによっては48時間以上

休薬日数の根拠になっているのは、それぞれの薬の半減期です。

  • セマグルチド:半減期約7日
  • チルゼパチド:半減期約5日
  • デュラグルチド:半減期約5日
  • リラグルチド:半減期約13時間
  • オルフォルグリプロン:半減期約24時間

週1回の注射剤は、最後の投与からまる1週間空けて、ようやく血中濃度が「胃排出への影響が問題にならない」レベルまで下がる、というイメージ。毎日打つタイプは、その日1回飛ばせばだいたい足りる、という設計です。

ASAの基準ではここにもうひとつ、通常のNPO(術前絶飲食)ルールが上乗せされます。

  • 透明な水分(水・お茶・スポーツドリンク):処置の2時間前まで
  • 軽い食事:6時間前まで
  • 揚げ物・脂っこい食事:8時間前まで

GLP-1使用者の場合、麻酔科が固形食の絶食時間を12–24時間に延ばす、または導入直前に胃エコーで残胃内容を確認してから判断する、というやり方を採るところが増えました。日本国内でも、消化器内視鏡センターのプロトコルにこのステップが入り始めています。

「7日空けたから絶対安全」ではなくて、「7日空けたうえでなお、麻酔科がもう一段の安全策を取りやすくなる」という意味です。患者さん側がやるべきは、まずこの7日を確保すること。

ひとつ補足。緊急手術の場合は、休薬を理由に手術を遅らせない。これも国際合意です。胃の中身が残っている前提で、迅速導入(RSI:rapid sequence induction)、輪状軟骨圧迫、胃エコー、必要なら経鼻胃管。麻酔科にはフルストマック対応の手順がきちんとあります。「GLP-1打ってます」を伝えれば、その手順に切り替えてくれる、というだけの話です。

どんな処置が「休薬対象」になるのか

線引きが曖昧に感じる読者が多いところなので、具体例で並べます。

休薬対象になりやすい処置(全身麻酔・深鎮静・中等度鎮静を伴う)

  • 上部消化管内視鏡(胃カメラ)で鎮静を使う場合
  • 下部消化管内視鏡(大腸カメラ)、ほぼ全例で鎮静使用
  • ERCP・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
  • 一般外科手術(腹腔鏡下胆嚢摘出、鼠径ヘルニア修復、虫垂切除など)
  • 整形外科の人工関節置換術、関節鏡手術
  • 婦人科の腹腔鏡手術、子宮鏡下手術
  • 不妊治療の採卵(静脈麻酔で行うことが多い)
  • 美容外科(脂肪吸引、豊胸、二重まぶた手術の全身麻酔ライン)
  • 減量手術(肥満外科:スリーブ状胃切除、胃バイパス)
  • 歯科インプラントや親知らず抜歯で静脈鎮静を使う場合
  • 白内障手術で鎮静を併用するケース
  • 心臓カテーテル検査、TAVI、アブレーション

原則として休薬不要

  • 局所麻酔のみで行う皮膚生検、ほくろ除去
  • 鎮静を使わない歯科治療(局所麻酔のみ)
  • 採血、点滴、CT・MRIの単純撮影
  • 経鼻内視鏡で鎮静を使わない場合(ただし施設方針による)
  • 局所麻酔の白内障手術(鎮静なし)

迷ったら、**「意識を落とすかどうか」**で判断するのが手っ取り早いです。プロポフォール、ミダゾラム、フェンタニル、デクスメデトミジン。この辺の薬を使うなら、休薬対象。

「経鼻胃カメラだから鎮静なしで大丈夫」と思って予約したら、当日「やっぱり鎮静をかけましょう」と言われるパターンもあります。予約時に「鎮静の有無」を確認しておくと、休薬の判断もブレません。

日本市場のブランド現実

ここ、海外の英語記事を直訳した日本語ブログでよく混乱しているところなので、丁寧に整理します。

一般名米国日本(PMDA承認)日本での適応
セマグルチド週1回(2型糖尿病用)Ozempicオゼンピック2型糖尿病
セマグルチド週1回(肥満症用)Wegovyウゴービ肥満症(2024年承認)
チルゼパチド週1回Mounjaro(糖尿)/ Zepbound(肥満)マンジャロ2型糖尿病のみ承認、肥満症は未承認
経口セマグルチドRybelsusリベルサス2型糖尿病
リラグルチド毎日(糖尿病用)Victozaビクトーザ2型糖尿病
リラグルチド毎日(肥満症用)Saxendaサクセンダ国内未承認(個人輸入扱い)
デュラグルチド週1回Trulicityトルリシティ2型糖尿病
オルフォルグリプロンFoundayo(2026年4月FDA承認)未承認国内では入手不可

この表で押さえておきたいポイント。

ひとつめ、ウゴービは2024年に肥満症で国内承認されました。BMI35以上、またはBMI27以上で2型糖尿病・脂質異常症・高血圧のいずれかを併発、という条件で保険適用も始まっています。

ふたつめ、マンジャロは2型糖尿病でしか承認されていない。米国のZepbound(肥満適応)はまだ日本に入ってきていません。日本国内で「マンジャロを痩せ薬として処方している」ケースは、ほぼすべて自由診療クリニックでの適応外(オフラベル)処方です。糖尿病保険診療と適応外ダイエット処方では、月の費用も指導内容もかなり違うので、自分がどちらの枠で使っているのか把握しておくほうが安全です。

みっつめ、Foundayo(オルフォルグリプロン)は2026年4月にFDAが承認した最新の経口GLP-1。海外メディアでよく見るので名前を覚えている読者もいると思いますが、日本では2026年5月時点で未承認。個人輸入で入ってくる可能性はあるものの、国内の医師に「Foundayo打ってます」と言っても通じない場面が多いはずです。

よっつめ、サクセンダは国内未承認。減量目的でリラグルチドを毎日打っている、という患者さんは、ほぼ全員が個人輸入経由か、医師の医師裁量輸入経由。医薬品副作用被害救済制度の対象外になるルートです。手術前のトラブル相談先も限定されてしまうので、ここはリスクとして頭に入れておきたいところ。

海外の患者向け資料には「Wegovy, Mounjaro, Zepbound, Foundayo」の4ブランド体制で書かれているケースが多いですが、日本に置き換えると「ウゴービ、マンジャロ(糖尿病適応のみ)、リベルサス、トルリシティ、ビクトーザ」が中心、という認識のほうが現実に近いです。

日本の医療制度で、誰が誰に伝えるのか

ここからは制度の話。仕組みがわかっていると、慌てなくて済みます。

日本の場合、GLP-1の処方ルートは大きく3系統に分かれます。

ひとつめ、糖尿病内科での保険診療。マンジャロ、オゼンピック、トルリシティ、ビクトーザ、リベルサスを2型糖尿病に対して処方。月の自己負担は3割で2,000–6,000円前後。手術や検査が決まったら、主治医が休薬の指示を出すのが原則ですが、人間ドックや他院での検査だと情報が伝わらないことがあります。

ふたつめ、肥満外来・大学病院系の専門外来でウゴービ保険処方。BMIや併存疾患の条件をクリアした人向け。ここはガイドラインも徹底されているので、術前休薬の指示は確実に出ます。

みっつめ、自由診療のメディカルダイエットクリニック。マンジャロ、オゼンピック、リベルサスの適応外処方が中心。ウゴービの自由診療枠もあります。手術や内視鏡の予定を初診で聞かないクリニックもまだ残っていて、患者さん側が自分で休薬日数を計算する必要が出るケースがある。オンライン診療メインのクリニックだと、なおさら情報が薄くなりがちです。

実際に伝える流れは、こんな順番が現実的。

  1. 検査・手術が決まった時点で、その診療科に「GLP-1を使っている」と申告
  2. 麻酔科外来(術前外来)があるなら、そこで使用薬と最終投与日を正確に伝える
  3. 自分のGLP-1処方医に休薬期間を電話で確認(自由診療のオンライン処方医でも、メッセージで連絡可)
  4. 処置の7日前(週1回製剤の場合)に最後の注射を打つ。それ以降は休薬
  5. 当日朝、改めて受付・看護師に最終投与日を再申告

伝え忘れがいちばん起きるのが、週1回の注射を「土曜の朝に打つ習慣」になっている人が、翌週金曜の検査日に間に合わないパターン。最後に打った土曜から検査の金曜までだと6日しか空きません。「週末に打って、翌週末に検査」だと足りない——この感覚をひとつ持っておくだけで事故が減ります。

処方や購入の前に確認しておくこと

次のペンや次の処方箋を受け取る前に、ここをチェックしておくと安心です。

確認項目なぜ重要か
直近6ヶ月の手術・内視鏡・歯科鎮静の予定休薬スケジュールが必要かどうかの判断材料
健康診断や人間ドックの予約日内視鏡が含まれているなら休薬対象
処方医に手術予定を申告したか申告がないと用量調整・休薬指示が出ない
自由診療か保険診療か適応外だと副作用救済制度の対象外
クリニックの夜間連絡手段急な発熱・腹痛で休薬判断が必要なとき
ペンの開封後の使用期限ウゴービ6週間、オゼンピック8週間など
在庫の本数(休薬で1本飛ばしても困らないか)1本スキップで治療リズムが乱れないか
適応外処方の場合の説明書面副作用時の責任範囲とフォロー体制

「3ヶ月先の人間ドックで胃カメラを撮る予定」みたいな話は、いま処方医に共有しておくほうが楽です。週1回の注射なら、処置の7日前に最終投与になるよう、いまから打つ曜日を調整できます。

オンライン診療のクリニックを使っている人は、メッセージ機能や電話で術前休薬の相談ができるかを最初にチェック。初診時の問診票で「手術予定なし」とチェックしたあと、半年後に予定が入ったときの連絡手段が確保されていないと、土壇場で困ります。

個人輸入のサクセンダや、海外で買って持ち帰ったWegovyを使っている人は、国内の医師が休薬期間の責任を持って指示しづらい現実があります。製剤名と用量、最終投与日を自分で正確に伝える準備が必要です。

麻酔科・主治医に持っていく質問

術前外来は時間が短いので、聞きたいことを紙にまとめて持っていくのが効率的です。テンプレ的に使える質問を並べておきます。

  • 私が使っているのは(ウゴービ・マンジャロ・オゼンピック・リベルサスのいずれか)で、最終投与日は◯月◯日です。今回の処置で休薬は何日必要ですか?
  • 鎮静は中等度・深鎮静・全身麻酔のどれですか?
  • 当日は固形食を何時間前まで、透明な水分を何時間前まで止めればいいですか?
  • 胃エコーや胃管挿入の準備はありますか?
  • 糖尿病でインスリンやSU薬と併用しているのですが、休薬期間中の血糖管理はどうすればいいですか?
  • 休薬中に食欲が戻って体重がリバウンドしそうな場合、どんな対策がありますか?

ここまで聞ければ、麻酔科側も「この患者さんは状況をわかっている」と把握できるので、当日のオペレーションがスムーズになります。

主治医(GLP-1処方医)に投げる質問は、別の角度から。

  • 今回の休薬で、再開のタイミングはいつにすればいいですか?
  • 休薬で食欲が一気に戻ったとき、用量はリセットしますか、それとも前の用量から再開しますか?
  • 検査・手術の前後で、副作用が出たら誰に連絡すればいいですか?

再開のタイミングは見落とされがちなんですよね。週1回製剤で7日休薬したあと、術後すぐに再開していいのか、傷の治りや食事再開を見てから再開するのか。ここは個別判断なので、必ず主治医と握っておきます。

休薬できない人はどうするか

2型糖尿病でGLP-1がインスリンや経口血糖降下薬の補助になっている人は、「とりあえず1週間止める」が血糖コントロールに響くことがあります。HbA1cが安定している人でも、休薬期間中に空腹時血糖が普段より50–80mg/dL上振れする、というのはよくあるパターン。

このタイプの患者さんに対する選択肢は、いくつかあります。

ひとつめ、休薬しないで「フルストマック対応」のプロトコルで麻酔をかける。ASAの2025年10月更新でも、休薬による血糖悪化リスクが、誤嚥リスクを上回ると判断される場合は、休薬せずに迅速導入と胃エコーで対応する選択肢が明示されました。糖尿病コントロールが厳しい人にとって、これは現実的な逃げ道です。

ふたつめ、当日朝の胃エコー判定。麻酔科が処置直前に超音波で胃の内容物を確認して、空であれば通常通り、残っていれば追加対策、という運用。日本国内でも内視鏡センターで導入が進んでいます。

みっつめ、内視鏡や手術のスケジュールを糖尿病コントロールに合わせる。緊急性の低い処置なら、HbA1cが落ち着いた時期を選んで休薬期間を確保する、という時間軸の使い方もあります。

「休薬」と「フルストマック対応」は、二者択一じゃなくて、患者さんの状態と処置の緊急性で選ぶグラデーションです。麻酔科は両方の手順を持っているので、自分の判断で「休薬できないから手術はやめます」と決めなくて大丈夫。

逆に、減量目的の自由診療でGLP-1を使っているだけの人は、1週間の休薬で困ることはほぼない。食欲が戻る感覚は出ますが、それで体重が大きくリバウンドする期間ではないし、休薬は手術後に再開すれば元のリズムに戻せます。ここは安心材料として持っておいてください。

検査・手術の予定を、いまの自分の打ち方に組み込む

最後に、日々の運用に落とす話を。

GLP-1の週1回注射は、打つ曜日を固定すると生活リズムに馴染みやすい。ただ、固定しすぎると検査の日に7日空けるのが難しいタイミングが出ます。年に1–2回ある人間ドックや、決まりかけている手術の予定を逆算して、打つ曜日を一時的にシフトするのが、いちばん事故が少ない運用です。

例えば、毎週土曜の朝に打つ習慣の人。再来週の月曜に大腸カメラの予約があるなら、今週の土曜に打って、来週は飛ばし、再来週の月曜に検査。検査後、傷や体調を見て主治医と再開のタイミングを決める。これでまる9日空くので、7日基準を余裕でクリアします。

毎月決まったタイミングで婦人科検診や歯科鎮静が入っている人は、カレンダーアプリでGLP-1注射日と医療予定を1枚で見られる状態にしておくと早めに気づけます。日曜の夜に1週間先まで眺めて、注射日と検査日が衝突していないかチェックする。これだけで、当日に慌てる確率がぐっと下がります。

旅行や出張で打つタイミングがズレる人もいるはずです。±2日のシフトは添付文書上も許容範囲なので、神経質になりすぎなくていい。むしろ、検査前後の1週間だけ厳密に運用する、という割り切りのほうが続きます。

ひとつだけ。「副作用が落ち着いてきたから自己判断で用量を増やす」を、検査直前の時期にやらない。胃排出遅延は用量依存で強くなるので、検査の3–4週間前に増量すると、ピーク濃度のタイミングが検査日と重なって、休薬していてもなお影響が残ることがあります。増量は検査が終わってから、と決めておくほうが体に優しいです。

静かに終わるために

GLP-1の術前休薬は、**「薬が効いている人へのお願い事」**くらいの位置づけが、たぶんいちばんしっくり来ます。怖い話ではないし、薬を否定する話でもない。胃の動きが遅くなっているぶん、麻酔をかける人にちょっとだけ余裕をあげる、という運用上の工夫です。

ウゴービで肥満症を治療している人、マンジャロで糖尿病をコントロールしている人、リベルサスを毎朝飲んでいる人、サクセンダを個人輸入で続けている人。製剤も適応も自由診療と保険診療の境界もそれぞれですが、手術や内視鏡が決まったら、まず処方医に申告して、麻酔科に最終投与日を伝える——この流れだけ覚えておけば、当日延期になる確率はかなり下がります。

判断材料がひとつ増えれば、それで十分です。次の予約や次のペンの前に、3分だけスケジュールを並べてみてください。

出典・参考

  • ASA「Consensus-based guidance on preoperative management of patients on GLP-1 receptor agonists」(2023年6月初版、2024年10月改訂、2025年10月多職種更新)
  • ESAIC + ESPEN Joint guidance(2024)
  • JSA(日本麻酔科学会)術前GLP-1取り扱いに関する声明(2024)
  • KSA(大韓麻酔通痛医学会)勧告(2024年末)
  • PMDA「ウゴービ皮下注添付文書」(2024年承認)
  • PMDA「マンジャロ皮下注アテオス添付文書」(2型糖尿病適応、2023年4月承認)
  • PMDA「オゼンピック皮下注SD添付文書」
  • PMDA「リベルサス錠添付文書」
  • FDA Prescribing Information: Wegovy, Ozempic, Mounjaro, Zepbound, Saxenda, Victoza, Trulicity, Foundayo
  • FDA「Foundayo (orforglipron) approval announcement」(2026年4月1日)
  • 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬の適正使用に関する見解」
  • 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
  • 日本消化器内視鏡学会「内視鏡検査・治療の鎮静ガイドライン」
  • UCSF・Cleveland Clinic 後ろ向き研究(2023):GLP-1使用者の周術期誤嚥率

この記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断・治療の代わりにはなりません。記事中のGLP-1薬はすべて処方薬です。服用・注射の開始・変更・中止は必ず医師にご相談ください。効果には個人差があります。最新の添付文書はPMDAウェブサイトでご確認ください。

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