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体重管理

手術したのに、また太ってきた。GLP-1は次の一手になりうるか——術後の人だけを集めた2つの試験

胃の手術をしたのに体重が戻ってきた。それは失敗ではなく、わりとよくある話です。術後の人だけを集めた2つの試験で、GLP-1はプラセボより大きく減らしました。ただ、規模は小さく、この用途で承認された薬はまだありません。

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本記事は情報提供およびライフスタイル参考を目的としており、医学的助言ではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

手術したのに、また太ってきた。GLP-1は次の一手になりうるか——術後の人だけを集めた2つの試験

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胃の手術まで受けたのに、体重がじわじわ戻ってきた。あるいは、最初から思ったほど減らなかった。そんなモヤモヤを抱えて、ここにたどり着いた人は少なくないと思います。

正直、つらいですよね。あれだけの決断をして、生活も変えて、それでも数字が逆戻りしていく。「自分の意志が弱いんだ」と責めたくなる気持ち、よくわかります。

でも、最初に一つだけ言わせてください。それ、あなたの失敗じゃないんです。

術後に体重がいくらか戻るのは、めずらしいことではありません。体には、減った体重を「元に戻そう」とする仕組みがそなわっています。気合いでどうにかなるものではないんです。そして今、その「次の一手」としてGLP-1という薬が研究の場で注目されています。術後の人だけを集めた2つの試験が、何を見せて、何はまだ見せていないのか。きょうは、そこを落ち着いて整理します。

「また太った」は失敗じゃなくて、よくある話

まず、ここをほどいておきたいんです。術後のリバウンドは、あなただけに起きている特別な失敗ではありません。

袖状胃切除(スリーブ)も胃バイパスも、たしかに強力な治療です。でも「一度やれば一生そのまま」という魔法ではない。手術から数年たつうちに、体重がいくらか戻ってくる人もいます。そもそも期待した減り方に届かなかった、という人もいます。どちらも、実際にいるんです。

理由は、意志の弱さではなく、生物学のほうにあります。体重が大きく減ると、体は「飢えている」と判断します。そして食欲を上げ、エネルギーの消費を下げる方向へと調整する。いわば守りに入るんです。手術でいったん下がった食欲が、時間とともにまた顔を出してくる。これは多くの人に起きうる、ごく自然な反応です。

ここで一度、考え方を切り替えてほしいんです。「手術が失敗した」のではなく、「手術は土台を作り、そのあと体が揺り戻した」。だとすれば、次に必要なのは自分を責めることではなく、揺り戻しに対してどんな道具が使えるかを知ることです。

そして近年、その道具の候補として名前があがっているのが、GLP-1受容体作動薬です。リラグルチドやセマグルチドといった、食欲に働きかける薬。もともとは肥満そのものの治療薬として使われてきたものを、術後にうまくいかなかった人に「足す」とどうなるか。そこを調べた研究が出てきました。

「うまくいかなかった手術に薬を足す」という発想

考え方はシンプルです。手術で胃の形は変わった。でも食欲という土台が戻ってきているなら、その食欲に直接働きかける薬を上に乗せたらどうか——という発想。

GLP-1は、もともと腸から出るホルモンに似せた薬です。食欲を抑え、満腹感を長持ちさせる方向に働きます。手術が「胃の容量」へのアプローチだとすれば、GLP-1は「食欲そのもの」へのアプローチ。角度が違うんですね。

ここで大事なのは、手術と薬を「どっちが勝ち」で並べないことです。どちらが優れているか、という競争ではありません。違う場所に効く2つの道具を、同じチームの一員として組み合わせられないか、という話。

念のため整理しておきます。これは「薬のほうが手術より良い」という主張ではありません。手術は手術で大きな役割を果たし、そのうえで揺り戻した食欲に薬で対処できるか、を見ている。手術とGLP-1は、ライバルではなく相棒です。この枠組みを外すと、話がぜんぶゆがみます。

では、実際に術後の人に薬を足すと、何が起きたのか。ここからは、2つの試験の中身を見ていきます。どちらも「術後にうまくいかなかった人」だけを集めた、という共通点があります。

BARI-OPTIMISE——リラグルチドを術後に足した試験

1つめが、BARI-OPTIMISEという試験です。リラグルチド(肥満症ではサクセンダの名で知られる成分)を、術後の人に足したらどうなるかを調べました。

設計はこうです。二重盲検・無作為化・プラセボ対照。くじ引きで2グループに分けて、本人も医師もどちらかわからない状態にする。そのうえで薬と偽薬を公平に比べる、いちばん信頼できる形です。リラグルチドは1日1回3.0mg、対するは偽薬。対象は、手術から1年以上たって、手術当日からの体重減少が20%以下にとどまった大人たちでした。期間は24週間です。

参加したのは70人。平均年齢47.6歳、74%が女性。ロンドンの2つの病院で行われた、規模の小さい試験です。

肝心の結果を見ましょう。24週後の体重の平均変化は、リラグルチド群でマイナス8.82%、偽薬群でマイナス0.54%。その差は8.03%でした(95%信頼区間5.66–10.39、P<0.001)。「偶然これだけの差がついた」とは考えにくい、と言える強さです。

指標リラグルチド3.0mgプラセボ
24週での体重の平均変化マイナス8.82%マイナス0.54%
両群の差8.03%

偽薬のほうはほぼ横ばい。一方で薬のグループは、術後にいったん止まっていた減量が、もう一段進みました。手術でうまくいかなかった人にGLP-1を足すと、偽薬より大きく減る——その方向性を、この試験は示しています。

ただし、数字の華やかさに引っぱられすぎないでください。これは70人、しかも24週という短さの試験です。この点は、効果の数字とまったく同じ重さで頭に置いてほしいところです(あとでまとめて触れます)。

BARI-STEP——セマグルチドで見えた、もう一段大きな信号

2つめが、BARI-STEPという別の試験です。今度はセマグルチド(肥満症ではウゴービの名で知られる成分)を使いました。術後の人を対象にしたセマグルチドの無作為化試験です。

こちらも二重盲検・無作為化・プラセボ対照。セマグルチドは週1回2.4mgの皮下注射、対するは偽薬です。対象は、胃バイパスか袖状胃切除から1年以上たった人。しかも手術からの減量が20%未満にとどまった、反応が芳しくなかった人たちです。期間は68週間と、BARI-OPTIMISEよりずっと長く設定されています。

参加したのは70人。平均年齢47.3歳、82.9%が女性。規模はやはり小さめです。

結果を見ます。68週後の体重の平均変化は、セマグルチド群でマイナス18.0%。偽薬群はプラス0.4%で、つまりわずかに増えていました。補正後の治療差は19.18%(95%信頼区間14.8–23.4、P<0.001)。BARI-OPTIMISEより長い期間で、より大きな差が出ています。

指標セマグルチド2.4mgプラセボ
68週での体重の平均変化マイナス18.0%プラス0.4%
補正後の治療差19.18%

偽薬群がほんの少し増えたのに対し、薬のグループは大きく減りました。期間が長いぶん、減量が積み上がる時間もあったと読めます。術後の停滞に対して、セマグルチドがもう一段はっきりした信号を出した——そう言える結果です。

ここでも、ひとことだけ。68週と長くなったのは良いことですが、参加者はやはり70人。小さな試験であることは変わりません。次の章で、この「小ささ」を正面から扱います。

小さくて初期段階の試験2つを、どう読むか

ここが、この記事でいちばん落ち着いて読んでほしいところです。数字の大きさだけを切り取ると、話の半分しか見ていないことになります。

2つの試験には、共通する限界があります。順番に並べますね。

第一に、規模が小さい。どちらも70人ずつです。何百人、何千人という大きな試験で繰り返し確かめられた段階には、まだ届いていません。人数が少ないと、結果のブレ幅も大きくなります。

第二に、期間の問題。BARI-OPTIMISEは24週、半年ほどしかありません。BARI-STEPは68週とましですが、それでも1年とちょっと。薬をやめたあとどうなるか、何年も使い続けたら何が起きるか——そこまでは、まだ見えていません。

第三に、対象が限定的です。どちらも「手術から1年以上たって、減量がおおむね20%までにとどまった人」だけを集めています。術後の全員にあてはまる話ではなく、うまくいかなかった一部の人での結果だ、という前提を外さないでください。

まとめると、いまわかっているのは「術後にうまくいかなかった70人ずつの小さな試験で、GLP-1は偽薬より大きく減らした」という初期段階の信号です。希望の持てる方向ではあります。でも「確実に効く」とは別物。前向きな初期結果として受け止める、くらいの距離感がちょうどいいです。

数字は本物です。ただ、その数字が立っている土台の小ささも、同じだけ本物。効果と限界を天秤の左右に同じ重さで乗せる——この読み方ができれば、ニュースの見出しに振り回されずにすみます。

競争ではなく補完——手術と薬は同じチーム

ここで、さっきの「相棒」の話に戻ります。2つの試験が静かに示しているのは、手術と薬の関係です。

どちらの試験も、すでに手術を受けた人に薬を「足して」います。手術をやめて薬に乗り換えた、のではありません。手術が作った土台の上に、薬を重ねた。つまり構図は、置き換えではなく上乗せです。

この読み方が、いちばん大事だと思います。「手術が効かなかったから薬」ではなく、「手術で進めて、揺り戻したぶんを薬で支える」。胃の形に効く手術と、食欲に効く薬。働く場所が違うからこそ、組み合わせる意味が出てきます。

アプローチ主に効く場所役割
肥満手術胃の容量・消化のしくみ体重を大きく下げる土台
GLP-1食欲・満腹感揺り戻しを支える次の一手

だから「手術かGLP-1か」という二択は、たぶん問いの立て方からずれています。実際の臨床で問われているのは、「この人にとって、いま2つをどう組み合わせるのが理にかなっているか」。そしてその判断は、ネットでも本人の自己流でもなく、肥満外科のチームの領分です。

まだ「術後のリバウンド用」として承認はされていない

ここは、はっきりさせておかないといけません。とても大事なところです。

「術後の体重リバウンドや、不十分な減量に対してGLP-1を使う」。この用途は、どの国でも、その用途として承認されていません(2026年時点)。まだ研究の段階で、いわゆる適応外使用(オフラベル)にあたります。

リラグルチドもセマグルチドも、「肥満症」という病気に対しては承認された薬です。でも「手術後にうまくいかなかった人に足す」という使い方は、その承認のなかで、臨床研究と専門医の判断にゆだねられている領域。BARI-OPTIMISEもBARI-STEPも、まさにその領域を探っている研究です。

ここを誤解しないでください。「術後のリバウンドに効く薬として、お墨付きが出ている」わけではありません。研究で良い信号が出ている、という段階です。だからこそ、使うかどうかは個人の判断で走るものではなく、専門のチームと相談しながら決める話になります。

日本での扱いも触れておきます。日本の薬はPMDA(医薬品医療機器総合機構)の枠組みで判断され、海外の承認がそのまま国内承認になるわけではありません。ウゴービは国内でも成人の肥満症に使われていますが、リラグルチド(サクセンダ)は国内未承認で、個人輸入には偽造品や健康被害のリスクがついて回ります。さらに「術後のリバウンドに足す」という使い方となると、保険のきかない自由診療になる可能性が高い。費用は月数万円規模が一つの目安ですが、クリニックによって幅があります。

安全の境界線——胃腸、膵炎、そして甲状腺

効くものには、必ず注意点もあります。ここは、効果の話と同じくらい大切です。

まず、いちばん出やすいのが胃腸の症状です。BARI-OPTIMISEでも、副作用の多くは胃腸のものでした。発生はリラグルチド群で80%、偽薬群で57%。薬のグループのほうが多く出ています。吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・便秘といったもの。ただし、この試験では重大な副作用はゼロで、治療に関連した死亡もありませんでした。出やすいけれど、多くは使い始めや増量のタイミングで起きやすい。そういう性質です。

次に、頻度は高くないけれど見逃せないサインがあります。急性膵炎(すいえん)です。リラグルチドを含むGLP-1で、致死的なものも含めて膵炎が報告されています。もし膵炎が疑われたら、その薬は中止する——これが原則です。激しい腹痛が続くようなときは、自己判断で様子を見ず、医療機関に連絡してください。

そして、はっきり引かれた一線が一つ。甲状腺です。肥満症向けのリラグルチド(サクセンダ)の添付文書には、甲状腺C細胞の腫瘍に関する枠組み警告(ボックスワーニング)があります。そして、甲状腺髄様がん(MTC)や多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の個人歴・家族歴がある人には、禁忌——つまり使えません。これは相談で乗り越える話ではなく、最初に必ず確認すべき絶対の境界線です。

注意の種類中身意味
胃腸症状吐き気・嘔吐・下痢など(リラ群80%)多くは使い始め・増量時。重大例はこの試験でゼロ
急性膵炎の疑いGLP-1で報告あり疑われたら中止。激しい腹痛は受診
MTC・MEN2の個人歴/家族歴甲状腺C細胞腫瘍の枠組み警告禁忌(使用できない)

だから、「副作用がないから安心」という話には絶対になりません。出やすい症状があり、まれでも重いサインがあり、そして使えない人がはっきりいる。そのうえで使うかどうかを、専門医と一緒に判断する——順番はいつもこれです。

肥満外科のチームに、何を聞けばいい?

ここまでをふまえて、診察室でそのまま使える質問を用意しました。自己診断や自己流の手配ではなく、専門のチームに相談するのが大前提。そのうえで、限られた時間を濃くするための問いです。

  1. わたしは、そもそも薬を足すことを考える対象に入りますか? 術後どれくらいたっているか、減り方が不十分かを確認してもらう
  2. わたしの体質で、この薬を使っても大丈夫ですか? MTC・MEN2の家族歴や、膵炎の既往がないかを最初にチェック
  3. 効果は、どのくらい期待していいですか? 試験の平均はあくまで平均。個人差を前提に「わたしの場合」を聞く
  4. 胃腸の症状が出たとき、どう対処すればいいですか? 量の増やし方や食べ方の工夫を、自己流ではなく医師と決める
  5. いつまで続け、やめたらどうなりますか? 長期のデータがまだ薄いこと、続け方・やめ方をどう設計するかを率直に

日本の外来は1人5–10分が現実です。手術の時期、いまの体重の動き、食事や生活の様子をメモして持っていくと、短い時間でも中身の濃い相談になります。自分で薬を手配しようとせず、まずはこの相談から始めてください。

ポイントは、「薬でなんとかする」を主軸に置かないこと。手術が作った土台があり、その上に薬が乗るかもしれない——その順番を、チームと一緒に確かめていく流れがいちばん健全です。

持ち帰ってほしい5つのこと

ここまで読んで、「結局、打てば確実に痩せるの?」という答えを探していたなら、少し肩透かしだったかもしれません。でも、都合のいい希望より、ありのままの現在地のほうが、いざというとき役に立ちます。

握っておくべきことは、そう多くありません。術後にまた太るのは、あなたの失敗ではなく、よくある体の反応。術後の人だけを集めた小さな試験2つで、GLP-1は偽薬より大きく減らした——リラグルチドは24週で8.03%の差、セマグルチドは68週で19.18%の差(どちらもP<0.001)。ただし参加者は各70人と少なく、片方は24週と短い。そして「術後のリバウンド用」として承認された薬は、まだありません。胃腸・膵炎・甲状腺の境界線もあり、判断はいつも専門のチームが先。

手術とGLP-1は、競い合うものではなく、同じチームの2つの道具。土台があって、その上に道具が乗るかもしれない、という関係です。この5つさえ握っておけば、ニュースや広告がどんな見出しを付けても、振り回されずに読めます。あなたが戻ってきた体重と向き合うとき、責めるべき相手はあなた自身ではありません。

GLP-1の副作用全体の見取り図はウゴービの副作用ガイドを、薬を支える生活習慣の土台づくりはGLP-1中の食事ガイドもあわせてどうぞ。


参考: BARI-OPTIMISE(術後1年以上・減量20%以下の成人を対象にしたリラグルチド3.0mgの無作為化プラセボ対照試験、24週)およびBARI-STEP(胃バイパス・袖状胃切除後の反応不十分な成人を対象にしたセマグルチド2.4mgの無作為化プラセボ対照試験、68週)。この記事は公開された臨床試験・学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、診断や治療、処方の代わりにはなりません。GLP-1は処方薬です。術後にGLP-1を足すかどうかの判断は、必ず肥満外科や肥満症を専門とする医師にご相談ください。効果には個人差があります。

参考文献

本記事の事実に関する記述は、以下の一次資料に照らして確認しています。

  1. PubMed (NIH)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37494014
  2. PubMed (NIH)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42174253

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