ウゴービやマンジャロを打って2週間。朝、体重計に乗って「お、動いた」とつぶやく瞬間。ここまでは気分がいいんですよね。でも見落としやすいのが、減った体重の中身です。脂肪だけ落ちているならいい。ところがGLP-1の体組成データだと、減量分の3分の1ほどが除脂肪量(筋肉・水分・骨)から来ています。ここ、案外あちこちの記事ですっ飛ばされている部分なんです。
仕組みはシンプルです。薬で食欲が抑えられる。食べる量が自然に減る。たんぱく質も一緒に落ちる。日本人の一般的な食事だと、GLP-1中に1日60gを下回る人が珍しくありません。これが1〜2ヶ月続くと、筋肉が目に見えて削れます。階段の3階で息切れする。夕方ぐったり来る。基礎代謝が下がって、「痩せたはずなのに疲れやすい」「やめたら戻った」につながっていく。
そこで今日は、GLP-1中に筋肉を守るための1日のたんぱく質目標量を、体重1kgあたりのg数で整理します。和食の朝、コンビニ昼、夜ごはんまで、具体的にどう組み立てるか。海外のGLP-1ユーザーは何をしているか。2026年4月時点の数字でまとめます。
1日に必要なたんぱく質、一般の基準では足りない
厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020年版」では、成人のたんぱく質の目標量(DG)は1kgあたり1.0g以上とされています。ただしこれは健康な人の維持レベルの話。減量中・50歳以上・運動量が多い人は、別の計算が必要になります。
減量時の目安として国際的に使われているのが、次の数字です。
| 状況 | 1日のたんぱく質目標 | 出典 |
|---|---|---|
| 一般成人の維持(RDA) | 0.8g/kg | WHO/FAO |
| 日本人の成人目標量(DG下限) | 1.0g/kg | 厚労省 2020年版 |
| 減量中・50歳以上 | 1.2〜1.6g/kg | ESPEN 2022、ACSM |
| GLP-1+筋トレ併用・筋肉量維持重視 | 1.6〜2.0g/kg | Prado CM et al, Am J Clin Nutr 2022 |
体重60kgの女性なら、一般の目安は1日60g。でもGLP-1で減量中なら72〜96gが適正レンジです。80kgの男性なら96〜128g。数字を見て「そんなに食えないよ」と思った方、まさにそこが今日の本題です。
GLP-1は食欲を薬で抑える薬です。「自然に食べられない」状態が続くので、いつもの食事バランスに任せていると、たんぱく質から先に落ちていきます。だからこそ、たんぱく質だけは意識して取りにいく。これが2026年、GLP-1中の栄養の基本姿勢です。
なぜGLP-1中はたんぱく質が特に落ちるのか
理由は3つあります。
ひとつめ、満腹感が早く来て食べきれない。GLP-1は胃の排出を遅らせる薬なので、食事の途中で「もうこれ以上は無理」となります。箸を置いて、ふう、と一息。すると炭水化物より先に、重いたんぱく質(肉・魚)を残しがちなんです。
ふたつめ、固形のたんぱく質が重く感じる。牛ステーキや鶏もも肉が「見るだけで胃が重い」という人、けっこう多いです。冷蔵庫の前で皿を持ってため息。結局、ご飯と味噌汁、パンとコーヒー、うどんだけ、と炭水化物中心の食事に寄っていきます。
みっつめ、食欲が抑えられて総エネルギーが減る。食事量が全体に減れば、たんぱく質も比例して減ります。1日1,200kcalしか食べられない日に、ふつうの日本人の食事比率(たんぱく質15%)で計算すると、たんぱく質はわずか45g。これだと筋肉が確実に削られていきます。
この3つが重なると、GLP-1ユーザーのたんぱく質は意識しないと1日40〜60gまで落ち込みます。体重60kgの人で0.7〜1.0g/kg。国際的な減量時基準の、半分以下です。
STEP 1・SURMOUNT-1が語る「減量の中身」
実際のデータを見ると、この問題の深刻さがはっきりします。
まずSTEP 1試験(Wilding JPH et al, NEJM 2021)。セマグルチド2.4mg(ウゴービ)を68週使った被験者で、体重が平均約15%減りました。体組成のサブ解析だと、実薬群の除脂肪量(筋肉・水分・骨)は約5.3kg減少、プラセボ群は約1.8kg。減った体重のおよそ3分の1が、除脂肪量から来ていた計算になります。
次にSURMOUNT-1試験(Jastreboff AM et al, NEJM 2022)。チルゼパチド15mg(マンジャロ相当の高用量)では、脂肪量が約34%減、除脂肪量も約11%減でした。
特に高齢者がGLP-1で急に減量すると、除脂肪量が偏って失われやすく、サルコペニアが加速したように進む心配があります。日本でもすでに、ウゴービを半年使ってから「階段を上ると息切れする」「握力が落ちた」と話す人が、臨床の現場で出てきています。
脂肪が落ちるのは、もちろん目的どおり。問題は、筋肉が思ったより落ちるという点です。これを補うのが、たんぱく質と筋トレの組み合わせ。今日はたんぱく質の話に絞ります。
1食20〜40g、ロイシン閾値を意識する
「1日の合計さえ追えばいい」というほど単純ではありません。たんぱく質にはMPS(筋たんぱく合成)を起動する閾値があって、これを超える一食を1日3〜4回つくるのが効きます。
MPSを強く起動するのに必要なのが、ロイシン2.5〜3.0g。食品で言うと、高品質なたんぱく質を1食あたり20〜30g取れば、この閾値を超えやすくなります。
| 食品 | 量 | たんぱく質 | ロイシン目安 |
|---|---|---|---|
| 鶏むね肉(加熱) | 100g | 31g | 2.4g |
| 鮭(加熱) | 100g | 22g | 1.7g |
| ギリシャヨーグルト無脂肪 | 150g | 15g | 1.5g |
| 卵(Lサイズ) | 3個 | 18g | 1.5g |
| 木綿豆腐 | 150g | 17g | 1.4g |
| ホエイプロテイン | 1スクープ | 25g | 2.8g |
| 納豆 | 1パック(45g) | 7g | 0.6g |
| 鯖缶水煮 | 100g | 20g | 1.5g |
| 牛モモ赤身 | 100g | 22g | 1.9g |
注目してほしいのが、ホエイプロテイン1スクープのロイシン値です。GLP-1で固形物が重い日でも、液体ならするっと入る。シェイカーを振ってひと口飲めば、その日はそれでOK。ロイシン閾値を満たすだけなら、ホエイの効率はずば抜けています。
逆に、納豆1パック単独だと7gと少なめ。ご飯のお供として毎朝食べても、それだけではMPS閾値に届きません。納豆+卵+豆腐の味噌汁、あるいは納豆+鮭のように重ねていく発想が要ります。
それと、1日80gを一食にまとめて取るのは効率がよくありません。20〜40gを1日3〜4食に分けるほうが、MPSをその都度起動できて、筋肉量の維持に効きます。
和食の朝、ここがいちばん崩れやすい
定番の和食の朝食、「ご飯・味噌汁・漬物・海苔」を計算すると、たんぱく質は7〜10gしかありません。これで1日が始まると、昼と夜で80gを取りにいくのは、正直きつい。意外と書かれていないんですが、朝に「足す」発想がないと、ここで詰みます。
朝の底上げが、GLP-1中の栄養設計でいちばん効く打ち手です。組み立て例を見てみましょう。
パターンA:和食を崩さずに増やす
- ご飯1杯(3g)
- 味噌汁:豆腐+わかめ(7g)
- 納豆1パック(7g)
- 卵焼きまたは目玉焼き(6g)
- 鮭の塩焼き半切れ(11g)
→ 合計約34g。これで朝食からMPS閾値をしっかり越えられます。
パターンB:時間がない朝
- ギリシャヨーグルト無脂肪150g(15g)
- プロテインシェイク(25g)
- バナナ1本(1g)
→ 合計約41g。準備3分。GLP-1で固形が重い朝の、救世主です。
パターンC:コンビニで完結
- 6Pチーズ2個(8g)
- サラダチキン(約27g)
- ゆで卵1個(6g)
→ 合計約41g。朝の電車の中でも食べ切れます。
和食の朝を「ご飯・味噌汁・漬物」のままにすると、ここで30gの差がつきます。1日では小さく見えても、1ヶ月で900g、半年で5.4kg分のたんぱく質供給差。筋肉量を守れるかどうかは、朝でほぼ決まる。そう言ってもいいくらいです。
コンビニ昼、サラダチキンだけで終わらせない
日本のコンビニは、GLP-1ユーザーにとってかなり恵まれた環境です。サラダチキン、ゆで卵、プロテインバー、ギリシャヨーグルト、鯖缶。全部そろっています。問題はレジ前。「これだけでいいかな」と一瞬迷うあの瞬間に、ゆで卵を1個足せるかどうかで差が出ます。サラダチキン1個で満足してしまうのが、よくあるミスです。
サラダチキン(125g、約27g)は優秀ですが、これだけだと食物繊維も脂質も足りません。現実的なのは、こんな組み合わせ。
| 組み合わせ | たんぱく質合計 |
|---|---|
| サラダチキン+おにぎり+豆腐サラダ | 35g |
| 鯖缶水煮+五穀米おにぎり+味噌汁 | 28g |
| 蕎麦+ゆで卵2個+冷奴 | 26g |
| プロテインバー+ギリシャヨーグルト+バナナ | 32g |
GLP-1中は「胃が重い」日があるので、液体寄りのプロテインバー+ヨーグルトの組み合わせを、食欲が落ちている日の保険として1つ用意しておくと安心です。
おにぎり1個だけでランチを終えると、たんぱく質ベースで見て3〜5g程度。これが週3日続くと、1週間で20〜30gの不足が積み上がっていきます。
サラダチキンと鯖缶と卵は、GLP-1時代の三種の神器です。この3つを冷蔵庫に常備しておくだけで、食欲が急に落ちた日でも1日60gラインを割らずに済みます。
夜ごはんは主菜を主役に
夜は家で食べる人が多いので、いちばん組み立てやすい時間帯です。ここで主菜(肉・魚)を100〜150g確保できれば、1日の合計はぐっと楽になります。
GLP-1で夜の食欲が落ちている場合のコツ。「今日はご飯1杯さえ重いな」という晩は、無理に量を増やすより、食べる順番をいじるだけで合計が変わります。
- 先に主菜から食べる。ご飯と味噌汁を先に入れると、主菜を残しがちです。
- 鍋・スープ系にする。水分が多いと胃にやさしく、鶏肉や魚、豆腐をまとめて取れます。
- 脂の少ない切り身を選ぶ。鮭、鱈、鯵、鶏むねは、脂が強い肉より胃もたれしにくい。
- 量より頻度。200gを1回ではなく、100gを2回に分けるほうが合計は増えます。
主菜の目安を覚えておくと便利です。
| 主菜 | 量 | たんぱく質 |
|---|---|---|
| 鶏むね肉のグリル | 150g | 47g |
| 鮭の塩焼き | 100g | 22g |
| 豚ロース生姜焼き | 120g | 26g |
| 牛モモ赤身ステーキ | 120g | 26g |
| 湯豆腐+鶏つくね | 豆腐150g+つくね3個 | 34g |
夜ごはんで30g以上のたんぱく質を1週間続けられたら、あとは朝と昼で40〜50g足すだけ。GLP-1中の体重60kg女性なら、目標80gをほぼクリアできます。
プロテインパウダー、日本でどう位置づけるか
日本ではプロテインパウダーは食品扱いで、処方も届け出も要りません。薬局やドラッグストア、ネット通販で、誰でも買えます。
GLP-1服用中にプロテインパウダーを使うメリットは、こんなところです。
- 固形が重い日でも液体なら入る。GLP-1で朝食が取れない日の保険になります。
- ロイシン量が多い。ホエイは1スクープで2.5〜2.8g、一発でMPS閾値を越えます。
- 1食あたりの単価が安い。1kg袋で3,000〜5,000円、1回分で約30〜50円。サラダチキン1個より安い。
種類別の使い分けはこうです。
- ホエイ:吸収が早い。トレーニング後や朝向き。乳糖不耐症の人は、加水分解ホエイかWPIを選ぶといいです。
- カゼイン:吸収が遅く、腹持ちがいい。就寝前向き。
- ソイ:植物性で、乳製品がダメな人向け。ロイシン量はホエイに一歩譲ります。
腎疾患がある人は、プロテインの大量摂取が腎臓の負担になるので、主治医に確認してからにしてください。健康な腎機能なら、2.0g/kg程度までは長期の安全性が報告されています。
日本でウゴービ・マンジャロを自由診療で処方しているクリニックでも、プロテインパウダーの併用を勧めるところが増えてきました。「薬で食べられない分を液体で補う」という発想が、2026年時点ではかなり一般的になっています。
日本人の現状、平均からどれくらい上げるか
厚生労働省「国民健康・栄養調査」2023年版によると、日本人成人の平均たんぱく質摂取量は、男性 約78g/日、女性 約67g/日です。
体重60kg女性の平均は1.1g/kg。一般の維持基準は満たしています。でも、GLP-1服用中の目標(1.2〜1.6g/kg)には足りません。
現状からの具体的な上げ幅を見てみます。
| 目標レベル | 体重60kg女性 | 体重80kg男性 |
|---|---|---|
| 現状平均 | 67g | 78g |
| GLP-1中下限(1.2g/kg) | 72g | 96g |
| 推奨中央(1.4g/kg) | 84g | 112g |
| 筋肉量維持重視(1.6g/kg) | 96g | 128g |
女性は現状から**+5〜30g**、男性は**+20〜50g**の上積みが必要です。プロテインシェイク1杯(25g)と卵2個(12g)で37g。1日の追加としては、この程度で十分カバーできる幅です。
日本で気をつけたい医療制度の現実
少し話がそれますが、薬の処方状況とお金の話にも触れておきます。たんぱく質の計算だけでなく、全体の前提として知っておくと、判断がぶれにくくなります。
ウゴービ(Wegovy、セマグルチド)は2023年3月に肥満症で国内承認、2024年2月に発売されました。ただし保険適用の条件が厳しく、BMI 35以上、またはBMI 27以上+合併症2つ以上を満たさないと、自由診療扱いです。自由診療だと月約2.5〜5万円。
マンジャロ(Mounjaro、チルゼパチド)は2型糖尿病の適応です。同じチルゼパチドの肥満症版、ゼップバウンド(Zepbound)は2024年12月に国内承認、2025年4月に発売されました。肥満目的でマンジャロを使う場合は適応外使用(オフラベル)で、自由診療で月約2〜4万円。
オゼンピック(Ozempic)は2型糖尿病の治療薬で、ダイエット目的の処方は適応外。サクセンダ(Saxenda、リラグルチド3.0mg)は日本では肥満症で未承認(リラグルチドはビクトーザとして2型糖尿病でのみ承認)。リベルサス(Rybelsus、経口セマグルチド)は糖尿病薬として承認されています。
薬代に月数万円かけるなら、その効果を筋肉の犠牲で払わないのが、いちばん割に合う戦略です。プロテインパウダー月3,000円、鶏むね肉月5,000円の追加投資で、減量の中身が脂肪中心に変わるなら、費用対効果は圧倒的にたんぱく質側にあります。
海外のGLP-1ユーザー、こう食べている
9市場で記事を出しているので、他の国の様子も共有しておきます。同じ薬でも、土台になる食文化が違うと工夫も変わってきて、これが意外とおもしろいんです。
米国ではプロテインパウダー文化が根強くて、朝に30〜40gのホエイシェイクを飲むのがほぼ標準。ウゴービやZepboundを処方する肥満外来は、初診のときにプロテイン摂取プロトコル(1日1.5〜1.8g/kg)を必ず渡してきます。
韓国では、위고비(ウゴービ)ユーザーの間で、日本とそっくりの悩みが出ています。한식の朝食(ご飯・국・반찬)はたんぱく質が薄いので、계란찜や두부を足そう、という啓発記事がSNSで回っているそうです。
中東湾岸諸国(UAE、サウジアラビアなど)はラマダン中の対応が独特です。日没後のイフタールと、日の出前のスフールの2食枠しか取れないので、1食あたり40〜50gをまとめて取る設計になります。スフールにスキル(ヨーグルト)+卵を入れるのが定番だとか。
フランスでは、朝のバゲット+カフェだとたんぱく質が5gに届きません。そこでオムレツ+フロマージュブランへの置き換えが、ウゴービ(Wegovy)を処方するクリニックから勧められています。
英国は2023年3月のNICE推奨で、ウゴービ(Wegovy)が国民保健サービス(NHS)で限定適用に。英国のGLP-1クリニックは、1食20gのたんぱく質+週3回の筋トレを、ほぼ必須プロトコルとして提示してきます。
中国では司美格鲁肽(セマグルチド)の使用が広がっていて、豆腐・魚・卵という伝統的なたんぱく源に加えて、プロテインパウダー(乳清蛋白)の市場が急成長中です。
どの国でも、ぶつかる壁は同じです。「食欲が落ちた状態で、たんぱく質をどう日常に埋め込むか」。日本の強みは、豆腐・納豆・魚・卵。胃にやさしい高品質たんぱく質が、毎日の食卓にもともとある。これを活かさない手はありません。
食欲が出ない日、どうやり過ごすか
GLP-1の用量を上げた週や、体調が悪い日は、食欲がゼロに近くなります。「ふだんの3分の1も入らない」という、あの静かなパニック。そういう日に無理して固形を押し込むと、吐き気がひどくなる。かといって何も食べないと、筋肉が削れる。困りますよね。
そこで優先順位を決めておくと、ぐっと楽になります。
- 水分と電解質を先に確保(経口補水液、塩分を足した野菜スープ)
- 液体のたんぱく質を1〜2杯(プロテインシェイク、牛乳、豆乳+きな粉)
- 固形が入るなら豆腐・卵・ヨーグルト(胃にやさしい順に)
- 脂の強い肉・揚げ物は避ける(胃の排出が遅れて吐き気が悪化)
「今日は液体で30gだけ取れればOK」という最低ラインを決めておくと、体調の悪い日も罪悪感なく過ごせます。これが2日続くようなら、次の診察で先生に相談してもいい水準です。
水分は1日2リットルを目安に、白湯・お茶・スープで取ってください。脱水は吐き気を悪化させる、最大の要因です。食物繊維は便秘対策で1日20g以上、野菜・海藻・きのこ・こんにゃくで。女性は鉄分(月経のある年代は18mg/日)、50代以降はビタミンD(1日10μg)も落ちやすいので注意。電解質(ナトリウム・カリウム・マグネシウム)はスポーツドリンクや味噌汁で、自然に取れる範囲で十分です。たんぱく質を増やすあまり、他の栄養素がおろそかにならないように、主食・主菜・副菜2品の基本形は崩さないでおくといいです。
次の診察で聞いておきたいこと
用量を上げるときや、3ヶ月目の経過観察で、こんな質問をすると診察が濃くなります。
- いまの食事で、たんぱく質は1日何g取れていそうですか?
- 体重減少の内訳(脂肪か筋肉か)を知る検査は、どこで受けられますか?
- 筋力低下や疲労感が出たら、用量は調整できますか?
- プロテインパウダーの併用は、この処方でも問題ないですか?
- 腎機能の定期チェックは、何ヶ月ごとに必要ですか?
- 筋トレを併用するなら、いつ始めるのがいいタイミングですか?
- 減量中に取るべきビタミン・ミネラル(鉄、ビタミンD、B群など)は?
- 減量ペースが月**3%**を超えたら、たんぱく質を増やすべきですか?
- やめるとき、たんぱく質摂取はそのまま維持すべきですか?
DXA(二重エネルギーX線吸収測定)という検査で、体脂肪と筋肉の内訳が測れます。自由診療で1回5,000〜15,000円程度。GLP-1を3〜6ヶ月使った時点で一度測ると、減量の質がはっきり見えてきます。
処方・購入前に確かめておきたいこと
クリニック選びや処方条件で、栄養の側からも確認しておくべき項目があります。
| 確認項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 栄養指導が付いているか | たんぱく質・総エネルギー・水分の具体的指示 |
| 体組成測定の頻度 | DXAやInBodyでの内訳チェック |
| 血液検査でのアルブミン値 | たんぱく質摂取不足のサイン |
| 筋力評価(握力など) | サルコペニア予防のモニタリング |
| 運動指導の併用 | 筋トレなしだと筋肉減少が加速 |
| 減量ペースの許容範囲 | 月3%以内が筋肉維持の目安 |
| 中止時のフォロー体制 | 体重・筋肉量のリバウンド管理 |
「薬だけ出して毎月再診」のクリニックだと、栄養の話は基本的に出てきません。最初に栄養管理士が在籍しているかを聞いておくと、薬以外の部分で差が見えてきます。
50歳以上とサルコペニア、筋トレ併用の目安
50歳を超えると、たんぱく質の合成効率が落ちてきます。これをアナボリック抵抗性と呼びます。若い頃と同じたんぱく質量では、筋肉を維持しきれなくなるんです。
高齢者を対象にした研究では、1.2g/kg以上のたんぱく質摂取がサルコペニア予防に役立つ、という報告があります。65歳以上で体重60kgの人なら72g以上。GLP-1を50代以降で使うなら、目標を1.4〜1.6g/kgまで上げて、1食あたり30g以上を確保するのが、筋肉量を守る現実的なラインです。
「歳を取ってから減量する意味があるのか」という議論もあります。でも肥満症による心血管リスク・膝関節の負担・睡眠時無呼吸の改善は、高齢者でもはっきり効果が出ます。ただし筋肉を減らさずに減量するという前提が、若年層以上に大事。ここが抜けると、フレイル(虚弱)にまっすぐ進んでしまいます。
それと、たんぱく質だけ増やしても、筋肉は「使わないと育たない」。GLP-1中の筋トレは、週2〜3回で十分です。
- 週2回の全身:スクワット、腕立て伏せ、ダンベルローイング(自宅でOK)
- 1回30分:ウォームアップ含めて
- 6〜10回×3セット:フォームが崩れるギリギリの重さで
- たんぱく質は運動後1時間以内:吸収が高まるタイミング
ジム通いが難しい人も、椅子からの立ち上がりスクワット20回×3セットを毎日やるだけで、下半身の筋肉維持にはかなり効きます。GLP-1処方クリニックが「筋トレ併用を強く推奨」と明記しているなら、そこは選び方として正解。薬だけ出して減量だけ追うクリニックは、体重の数字は落ちるけど中身が薄い減量になりがちです。
薬に任せて、食事量だけ減るのを放っておく。半年後にはたしかに体重が落ちている。でも残るのは、筋肉が削れた身体です。鏡の前で「あれ、こんなにげっそりしてたっけ」とつぶやく朝。やめた瞬間に食欲が戻り、戻った食事で脂肪だけが先に戻ってくる。GLP-1で、いちばんありがちなリバウンドのパターンです。
1日のたんぱく質を、体重1kgあたり1.2〜1.6g。朝の納豆と卵、昼のサラダチキン、夜の鮭かむね肉、そして食欲が落ちた日のプロテインシェイク。この4つの習慣だけで、減量の質はかなり変わります。
次の診察で「たんぱく質、1日どのくらい取れてますかね」と先生に聞いてみてください。GLP-1を長く続けるうえで、いちばん実用的な質問のひとつです。
出典・参考
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
- 厚生労働省「国民健康・栄養調査 2023年」
- Wilding JPH et al. "Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity" NEJM 2021 (STEP 1)
- Jastreboff AM et al. "Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity" NEJM 2022 (SURMOUNT-1)
- Prado CM et al. "Protein requirements during weight loss" Am J Clin Nutr 2022
- ESPEN guideline on clinical nutrition and hydration in geriatrics (Volkert D et al, 2022)
- Devries MC et al. "Changes in kidney function do not differ between healthy adults consuming higher- compared with lower- or normal-protein diets" J Nutr 2018
- PMDA「ウゴービ皮下注添付文書」(2023年承認)
- PMDA「マンジャロ皮下注アテオス添付文書」(2023年4月承認)
GLP-1薬はすべて処方薬です。服用・注射の開始や中止は、必ず主治医と相談のうえで進めてください。効果や副作用には個人差があります。最新の添付文書はPMDAサイトで確認できます。
参考文献
本記事の事実に関する記述は、以下の一次資料に照らして確認しています。
- PubMed Central (NIH)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11965027
- academic.oup.comacademic.oup.com/jes/article/5/Supplement_1/A16/6240360
- DailyMed (NIH)dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=adec4fd2-685…



