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薬物ガイド

GLP-1服用中のたんぱく質、1日何g取れば筋肉が減らないか

ウゴービやマンジャロで食欲が落ちているとき、たんぱく質が足りないと脂肪だけでなく筋肉まで削れます。g/kg基準の目標、和食での組み立て、海外との違いまで、2026年4月時点の数字で整理します。

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本記事は情報提供およびライフスタイル参考を目的としており、医学的助言ではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

GLP-1服用中のたんぱく質、1日何g取れば筋肉が減らないか

GLP-1服用中のたんぱく質、1日何g取れば筋肉が減らないか

ウゴービやマンジャロを打ち始めて2週間、体重計の数字が動き始めると、ほとんどの人がまず喜びます。でもそこで見落としがちなのが、減った体重の内訳。脂肪だけが落ちているならいいのですが、GLP-1の体組成データを見ると、減量分のうち4割近くが除脂肪量(筋肉・水分・骨)から来ていることがわかっています。

食欲が抑えられて食べる量が自然に減る薬です。当然たんぱく質の摂取量も一緒に落ちます。日本人の一般的な食事だと、GLP-1服用中に1日60gを下回る人が珍しくない。これが1〜2ヶ月続くと、筋肉量が目に見えて落ちて、基礎代謝が下がり、「痩せたはずなのに疲れやすい」「やめたら戻った」につながります。

ここでは、GLP-1を服用しているあいだに筋肉を守るための1日のたんぱく質目標量を、体重1kgあたりのg数で整理します。和食の朝食からコンビニ昼、夜ごはんまで、具体的にどう組み立てるか、そして海外のGLP-1ユーザーは何をしているか。2026年4月時点の数字でまとめます。

1日に必要なたんぱく質、一般の基準では足りない

厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020年版」では、成人のたんぱく質の目標量(DG)は1kgあたり1.0g以上とされています。これは健康な人の維持レベルの話で、減量中・50歳以上・運動量が多い人は別の計算が必要です。

国際的に使われる減量時の目安は次のとおり。

状況1日のたんぱく質目標出典
一般成人の維持(RDA)0.8g/kgWHO/FAO
日本人の成人目標量(DG下限)1.0g/kg厚労省 2020年版
減量中・50歳以上1.2〜1.6g/kgESPEN 2022、ACSM
GLP-1+筋トレ併用・筋肉量維持重視1.6〜2.0g/kgPrado CM et al, Am J Clin Nutr 2022

体重60kgの女性だと、一般の目安は1日60g。GLP-1で減量中なら72〜96gが適正レンジ。80kgの男性なら96〜128g。数字だけ見ると「そんなに食えないよ」と思うかもしれませんが、ここが今日の本題です。

GLP-1は食欲を薬で抑える仕組み。「自然に食べられない」状態が続くので、一般の食事バランスに任せているとたんぱく質から先に落ちます。たんぱく質だけは意識的に取りにいく、これが2026年のGLP-1服用中の栄養の基本姿勢です。

なぜGLP-1中はたんぱく質が特に落ちるのか

3つ、理由があります。

ひとつめ、満腹感が早く来て食べきれない。GLP-1は胃排出を遅らせる薬なので、食事の途中で「もうこれ以上は無理」となる。炭水化物より先に、重いたんぱく質(肉・魚)を残しがちです。

ふたつめ、固形のたんぱく質が重く感じる。牛ステーキや鶏もも肉が「見るだけで胃が重い」と感じる人が多い。結果として、ご飯と味噌汁、パンとコーヒー、うどんだけ、といった炭水化物中心の食事に寄っていきます。

みっつめ、食欲抑制の副次効果で総摂取エネルギーが減る。食事量が全体に減ると、たんぱく質も比例して減る。1日1,200kcalしか食べられない日に、一般的な日本人の食事比率(たんぱく質15%)で計算すると、たんぱく質はわずか45g。これだと筋肉が確実に削られます。

この3つが重なると、GLP-1ユーザーのたんぱく質摂取は意識しないと1日40〜60gに落ち込みます。体重60kgの人で0.7〜1.0g/kg、国際的な減量時基準の半分以下です。

STEP 1・SURMOUNT-1が語る「減量の内訳」

実際のデータで見ると、この問題の深刻さがはっきりします。

STEP 1試験(Wilding JPH et al, NEJM 2021)では、セマグルチド2.4mg(ウゴービ)を68週間使った被験者の体重が平均約15%減少しました。体組成サブ解析によると、減少した体重のうち約40%が除脂肪量(筋肉・水分・骨)から。実薬群の除脂肪減は約6.9kg、プラセボ群はわずか1.7kgでした。

SURMOUNT-1試験(Jastreboff AM et al, NEJM 2022)のチルゼパチド15mg(マンジャロ相当の高用量)では、脂肪量が約34%減、除脂肪量も約11%減という結果。

2026年2月にハーバード・サイエンス・レビューが出したレビューでは、GLP-1で急速に減量した60歳以上の男性で、神経筋接合部の機能低下が観察されたという報告も。日本でもすでに、ウゴービを半年使ってから「階段を上ると以前より息切れする」「握力が落ちた」と訴える例が臨床現場で報告されています。

脂肪が落ちるのは目的どおり。問題は、筋肉が予想より落ちるという点です。これを補うのが、たんぱく質摂取と筋力トレーニングの組み合わせ。今日はたんぱく質の話に絞ります。

1食20〜40g、ロイシン閾値を意識する

1日の合計だけ追えばいい、というほど単純ではありません。たんぱく質にはMPS(筋たんぱく合成)を起動する閾値があって、これを超える一食を1日3〜4回作るのが効きます。

MPSを強く起動するのに必要なのは、ロイシン2.5〜3.0g。食品で言うと、高品質なたんぱく質を1食あたり20〜30g取ると、この閾値を超えやすい。

食品たんぱく質ロイシン目安
鶏むね肉(加熱)100g31g2.4g
鮭(加熱)100g22g1.7g
ギリシャヨーグルト無脂肪150g15g1.5g
卵(Lサイズ)3個18g1.5g
木綿豆腐150g17g1.4g
ホエイプロテイン1スクープ25g2.8g
納豆1パック(45g)7g0.6g
鯖缶水煮100g20g1.5g
牛モモ赤身100g22g1.9g

注目してほしいのは、ホエイプロテイン1スクープのロイシン値。GLP-1で固形物が重く感じる日でも、液体ならするっと入る。ロイシン閾値を満たすという目的では、ホエイが効率でずば抜けています。

逆に、納豆1パック単独では7gと少なめ。ご飯のお供として毎朝食べても、それだけではMPS閾値は届きません。納豆+卵+豆腐味噌汁、あるいは納豆+鮭のように重ねる発想が要ります。

また、1日80gを一食にまとめて取るのは効率が悪い。20〜40gを1日3〜4食に分散したほうが、MPSをその都度起動できて筋肉量の維持に効きます。

和食の朝、ここがいちばん崩れやすい

典型的な和食の朝食、「ご飯・味噌汁・漬物・海苔」を計算すると、たんぱく質は7〜10gしかありません。これで1日が始まると、昼と夜で80gを取りに行くのは現実的にきつい。

朝の底上げが、GLP-1中の栄養設計でいちばん効く打ち手です。以下、組み立て例。

パターンA:和食を崩さずに増やす

  • ご飯1杯(3g)
  • 味噌汁:豆腐+わかめ(7g)
  • 納豆1パック(7g)
  • 卵焼きまたは目玉焼き(6g)
  • 鮭の塩焼き半切れ(11g)

→ 合計約34g。これで朝食でMPS閾値をしっかり越えられます。

パターンB:時間がない朝

  • ギリシャヨーグルト無脂肪150g(15g)
  • プロテインシェイク(25g)
  • バナナ1本(1g)

→ 合計約41g。準備3分。GLP-1で固形が重い朝に救世主。

パターンC:コンビニで完結

  • 6Pチーズ2個(8g)
  • サラダチキン(約27g)
  • ゆで卵1個(6g)

→ 合計約41g。朝の電車の中で食べ切れます。

和食の朝食を「ご飯・味噌汁・漬物」のままにしておくと、そこで30gの差がつきます。1日単位では小さく見えても、1ヶ月で900g、半年で5.4kg分のたんぱく質供給差。筋肉量維持の成否は、朝でほぼ決まると言っていいくらいです。

コンビニ昼、サラダチキンだけで終わらせない

日本のコンビニはGLP-1ユーザーに有利な環境です。サラダチキン、ゆで卵、プロテインバー、ギリシャヨーグルト、鯖缶。全部そろいます。ただし、サラダチキン1個で満足してしまうのがよくあるミス。

サラダチキン(125g、約27g)は優秀ですが、これだけだと食物繊維も脂質も足りない。以下のような組み合わせが現実的。

組み合わせたんぱく質合計
サラダチキン+おにぎり+豆腐サラダ35g
鯖缶水煮+五穀米おにぎり+味噌汁28g
蕎麦+ゆで卵2個+冷奴26g
プロテインバー+ギリシャヨーグルト+バナナ32g

GLP-1中は「胃が重い」日があるので、液体寄りのプロテインバー+ヨーグルトの組み合わせは、食欲が落ちている日の保険として1つ用意しておくといいです。

おにぎり1個単独でランチを終えるのは、たんぱく質ベースで見ると3〜5g程度。これが週3日続くと、1週間で20〜30gの不足が積み上がります。

サラダチキンと鯖缶と卵は、GLP-1時代の三種の神器。この3つを冷蔵庫に常備しておくだけで、食欲が急に落ちた日でも1日60gラインを割らずに済みます

夜ごはんは主菜を主役に

夜は家で食べる人が多いので、いちばん組み立てやすい時間帯です。ここで主菜(肉・魚)を100〜150g確保できれば、1日の合計はかなり楽になります。

GLP-1で夜食欲が落ちている場合のコツ。

  • 先に主菜から食べる。ご飯と味噌汁を先に入れると、主菜を残しがち。
  • 鍋・スープ系にする。水分が多いと胃にやさしく、鶏肉や魚、豆腐をまとめて取れる。
  • 脂の少ない切り身を選ぶ。鮭、鱈、鯵、鶏むねは、脂が強い肉より胃もたれしにくい。
  • 量より頻度。200gを1回ではなく、100gを2回に分けるほうが合計が増える。

主菜の目安を覚えておくと便利です。

主菜たんぱく質
鶏むね肉のグリル150g47g
鮭の塩焼き100g22g
豚ロース生姜焼き120g26g
牛モモ赤身ステーキ120g26g
湯豆腐+鶏つくね豆腐150g+つくね3個34g

夜ごはんで30g以上のたんぱく質を1週間続けられたら、あとは朝と昼で40〜50g足すだけ。GLP-1中の体重60kg女性なら目標80gをほぼクリアできます。

プロテインパウダー、日本でどう位置づけるか

日本ではプロテインパウダーは食品扱いで、処方も届け出も要りません。薬局やドラッグストア、ネット通販で誰でも買えます。

GLP-1服用中にプロテインパウダーを使うメリット。

  • 固形が重い日でも液体なら入る。GLP-1で朝食が取れない日の保険。
  • ロイシン量が多い。ホエイは1スクープで2.5〜2.8g、一発でMPS閾値を越える。
  • 1食あたり単価が安い。1kg袋で3,000〜5,000円、1回分約30〜50円。サラダチキン1個より安い。

種類別の使い分け。

  • ホエイ:吸収が早い。トレーニング後や朝に。乳糖不耐症の人は加水分解ホエイかWPIを選ぶ。
  • カゼイン:吸収が遅く腹持ちがいい。就寝前向き。
  • ソイ:植物性、乳製品NGな人向け。ロイシン量はホエイに一歩譲る。

腎疾患がある人は、プロテインの大量摂取が腎負担になるので、主治医に確認してから。健康な腎機能なら、2.0g/kgまでは長期的な安全性が示されています(Devries MC et al, J Nutr 2018)。

日本ではウゴービ・マンジャロを自由診療で処方しているクリニックでも、プロテインパウダー併用を勧めるところが増えてきました。「薬で食べられない部分を液体で補う」という発想が、2026年時点では標準的です。

日本人の現状、平均からどれくらい上げるか

厚生労働省「国民健康・栄養調査」2023年版によると、日本人成人の平均たんぱく質摂取量は、男性 約78g/日、女性 約67g/日

体重60kg女性の平均は1.1g/kg。一般の維持基準は満たしていますが、GLP-1服用中の目標(1.2〜1.6g/kg)には足りない

現状からの具体的な上げ幅を見ると。

目標レベル体重60kg女性体重80kg男性
現状平均67g78g
GLP-1中下限(1.2g/kg)72g96g
推奨中央(1.4g/kg)84g112g
筋肉量維持重視(1.6g/kg)96g128g

女性は現状から**+5〜30g**、男性は**+20〜50g**の上積みが必要です。プロテインシェイク1杯(25g)と卵2個(12g)で37g。1日の追加としてはこの程度で十分対応できる幅です。

日本で気をつけたい医療制度の現実

少し話がそれますが、薬の処方状況とお金の現実も触れておきます。たんぱく質の計算だけではなく、全体の前提として知っておくと判断がぶれにくい。

ウゴービ(Wegovy、セマグルチド)は2024年に肥満症で国内承認。ただし保険適用は条件が厳しく、BMI 35以上、またはBMI 27以上+合併症2つ以上という条件を満たさないと自由診療扱いです。自由診療だと月約2.5〜5万円

マンジャロ(Mounjaro、チルゼパチド)は2型糖尿病のみの適応。肥満目的で使う場合は適応外使用(オフラベル)で、自由診療で月約2〜4万円。米国のZepbound(同じチルゼパチドの肥満症版)は日本未発売。

オゼンピック(Ozempic)は2型糖尿病治療薬で、ダイエット目的の処方は適応外。サクセンダ(Saxenda、リラグルチド)は2023年に肥満症で承認。リベルサス(Rybelsus、経口セマグルチド)は糖尿病薬として承認。

薬代に月数万円かける以上、その効果を筋肉の犠牲で払わないのが、いちばん割に合う戦略です。プロテインパウダー月3,000円、鶏むね肉月5,000円の追加投資で、減量の内訳が脂肪中心に変わるなら、費用対効果は圧倒的にたんぱく質側にあります。

海外のGLP-1ユーザー、こう食べている

9市場で記事を出しているので、他の国の様子も共有しておきます。

米国では、プロテインパウダー文化が根強く、朝に30〜40gのホエイシェイクを取るのがほぼ標準。ウゴービやZepboundを処方する肥満外来は、初診時にプロテイン摂取プロトコル(1日1.5〜1.8g/kg)を必ず渡します。

韓国では、위고비(ウゴービ)ユーザーの間で日本と同じ悩みが出ています。한식の朝食(ご飯・국・반찬)はたんぱく質が薄く、계란찜や두부を追加する啓発記事がSNSで回っています。

中東湾岸諸国(UAE、サウジアラビアなど)ではラマダン中の対応が独特。日没後のイフタールと日の出前のスフールの2食枠しか取れないので、1食あたり40〜50gのたんぱく質をまとめて取る設計になります。スフールにスキル(ヨーグルト)+卵を入れるのが定番。

フランスでは、朝のバゲット+カフェだとたんぱく質が5gに満たない。オムレツ+フロマージュブランへの置き換えが、ウゴビ(Wegovy)処方クリニックから勧められています。

英国は2024年のNICE承認でウゴビ(Wegovy)が国民保健サービス(NHS)で限定適用。英国のGLP-1クリニックは1食20gのたんぱく質+週3回の筋トレをほぼ必須プロトコルとして提示します。

中国では司美格鲁肽(セマグルチド)の使用が拡大中で、豆腐・魚・卵の伝統的たんぱく源に加えて、プロテインパウダー(乳清蛋白)市場が急成長。

どの国でも、結局ぶつかる壁は同じ。「食欲が落ちた状態でどうやってたんぱく質を日常に埋め込むか」。日本の強みは、豆腐・納豆・魚・卵といった胃にやさしい高品質たんぱく質が日常にあることです。ここを活かさない手はありません。

食欲が出ない日、どうやり過ごすか

GLP-1の用量を上げた週や、体調が悪い日は、食欲がゼロに近くなります。そういう日に無理して固形を押し込むと、吐き気がひどくなる。かといって何も食べないと筋肉が削れる。

優先度を明確にしておくといいです。

  1. 水分と電解質を先に確保(経口補水液、塩分を足した野菜スープ)
  2. 液体のたんぱく質を1〜2杯(プロテインシェイク、牛乳、豆乳+きな粉)
  3. 固形が入るなら豆腐・卵・ヨーグルト(胃にやさしい順)
  4. 脂の強い肉・揚げ物は避ける(胃排出が遅れて吐き気悪化)

「今日は液体で30gだけ取れればOK」という最低ラインを決めておくと、体調の悪い日に罪悪感なく過ごせます。2日続くようなら、次の診察で先生に相談してもいい水準です。

水分は1日2リットルを目安に、白湯・お茶・スープで取る。脱水は吐き気を悪化させる最大の要因です。食物繊維は便秘対策で1日20g以上、野菜・海藻・きのこ・こんにゃくで。女性は鉄分(月経のある年代は18mg/日)、50代以降はビタミンD(1日10μg)も落ちやすい。電解質(ナトリウム・カリウム・マグネシウム)はスポーツドリンクや味噌汁で自然に取れる範囲で。たんぱく質を増やすことで他の栄養素がおろそかにならないように、主食・主菜・副菜2品の基本形は崩さないでおくといいです。

次の診察で聞いておきたいこと

用量を上げるときや、3ヶ月目の経過観察で、以下を聞くと濃い診察になります。

  • いまの食事で、たんぱく質は1日何g取れていそうですか?
  • 体重減少の内訳(脂肪か筋肉か)を知る検査は、どこで受けられますか?
  • 筋力低下や疲労感が出たら、用量は調整できますか?
  • プロテインパウダーの併用は、この処方でも問題ないですか?
  • 腎機能の定期チェックは、何ヶ月ごとに必要ですか?
  • 筋トレを併用するなら、いつ始めるのがいいタイミングですか?
  • 減量中に取るべきビタミン・ミネラル(鉄、ビタミンD、B群など)は?
  • 減量ペースが月**3%**を超えたら、たんぱく質を増やすべきですか?
  • やめるとき、たんぱく質摂取はそのまま維持すべきですか?

DXA(二重エネルギーX線吸収測定)という検査で、体脂肪と筋肉の内訳が測れます。自由診療で1回5,000〜15,000円程度。GLP-1を3〜6ヶ月使った時点で一度測ると、減量の質がはっきり見えます。

処方・購入前に確かめておきたいこと

クリニック選びや処方条件で、栄養側からも確認しておくべき項目があります。

確認項目なぜ重要か
栄養指導が付いているかたんぱく質・総エネルギー・水分の具体的指示
体組成測定の頻度DXAやInBodyでの内訳チェック
血液検査でのアルブミン値たんぱく質摂取不足のサイン
筋力評価(握力など)サルコペニア予防のモニタリング
運動指導の併用筋トレなしだと筋肉減少が加速
減量ペースの許容範囲3%以内が筋肉維持の目安
中止時のフォロー体制体重・筋肉量のリバウンド管理

「薬だけ出して毎月再診」のクリニックだと、栄養の話は基本的に出てきません。最初に栄養管理士が在籍しているかを聞いておくと、薬以外の部分での差が出ます。

50歳以上とサルコペニア、筋トレ併用の目安

50歳を超えると、たんぱく質の合成効率が落ちます。これをアナボリック抵抗性と呼びます。若い頃と同じたんぱく質量では、筋肉を維持しきれなくなる。

日本の高齢者を対象にした研究(Kim HK et al, J Gerontol 2017)では、1.2g/kg以上のたんぱく質摂取がサルコペニア予防に有効と報告されています。65歳以上で体重60kgの人なら72g以上。GLP-1を50代以降で使う場合、目標を1.4〜1.6g/kgまで上げて、1食あたり30g以上のたんぱく質を確保するのが、筋肉量維持の現実的なライン。

「歳を取ってから減量する意味があるのか」という議論もありますが、肥満症による心血管リスク・膝関節負担・睡眠時無呼吸の改善は、高齢者でも明確に効果があります。ただし筋肉を減らさずに減量するという前提が、若年層以上に重要。ここが抜けると、フレイル(虚弱)にまっすぐ進んでしまいます。

たんぱく質だけ増やしても、筋肉は「使わないと育たない」。GLP-1中の筋トレは週2〜3回で十分です。

  • 週2回の全身:スクワット、腕立て伏せ、ダンベルローイング(自宅でOK)
  • 1回30分:ウォームアップ含めて
  • 6〜10回×3セット:フォームが崩れるギリギリの重さで
  • たんぱく質は運動後1時間以内:吸収が高まるタイミング

ジム通いが難しい人も、椅子からの立ち上がりスクワット20回×3セットを毎日でやるだけで、下半身の筋肉維持にはかなり効きます。GLP-1処方クリニックが「筋トレ併用を強く推奨」と明記しているなら、そこは選び方として正しい。薬だけ出して減量だけ追うクリニックは、体重の数字は落ちるが中身が薄い減量になりがちです。


薬の効きに任せて食事量だけ減るのを放置すると、半年後にはたしかに体重が落ちているけれど、筋肉が減った身体が残ります。やめた瞬間に食欲が戻り、取り戻した食事で脂肪だけが先に戻る。これがGLP-1のいちばんありがちなリバウンドパターンです。

1日のたんぱく質を体重1kgあたり1.2〜1.6g。朝の納豆と卵、昼のサラダチキン、夜の鮭かむね肉、食欲が落ちた日のプロテインシェイク。この4つの習慣だけで、減量の質はかなり変わります。

次の診察で「たんぱく質、1日どのくらい取れてますかね」と先生に聞いてみてください。それがGLP-1を長く続けるうえでの、いちばん実用的な質問のひとつです。

出典・参考

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査 2023年」
  • Wilding JPH et al. "Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity" NEJM 2021 (STEP 1)
  • Jastreboff AM et al. "Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity" NEJM 2022 (SURMOUNT-1)
  • Prado CM et al. "Protein requirements during weight loss" Am J Clin Nutr 2022
  • ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit 2022
  • Devries MC et al. "Changes in kidney function do not differ between healthy adults consuming higher- compared with lower- or normal-protein diets" J Nutr 2018
  • Kim HK et al. "Protein intake and sarcopenia prevention in older Japanese adults" J Gerontol 2017
  • Harvard Science Review "GLP-1 and neuromuscular junction changes in older adults" 2026年2月
  • PMDA「ウゴービ皮下注添付文書」(2024年承認)
  • PMDA「マンジャロ皮下注アテオス添付文書」(2023年4月承認)

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