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薬物ガイド

GLP-1服用中のたんぱく質、1日何g取れば筋肉が減らないか

ウゴービやマンジャロで食欲が落ちているとき、たんぱく質が足りないと脂肪だけでなく筋肉まで削れます。g/kg基準の目標、和食での組み立て、海外との違いまで、2026年4月時点の数字で整理します。

35 min read

本記事は情報提供およびライフスタイル参考を目的としており、医学的助言ではありません。健康に関する判断は医療専門家にご相談ください。

GLP-1服用中のたんぱく質、1日何g取れば筋肉が減らないか

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ウゴービやマンジャロを打って2週間。朝、体重計に乗って「お、動いた」とつぶやく瞬間。ここまでは気分がいいんですよね。でも見落としやすいのが、減った体重の中身です。脂肪だけ落ちているならいい。ところがGLP-1の体組成データだと、減量分の3分の1ほどが除脂肪量(筋肉・水分・骨)から来ています。ここ、案外あちこちの記事ですっ飛ばされている部分なんです。

仕組みはシンプルです。薬で食欲が抑えられる。食べる量が自然に減る。たんぱく質も一緒に落ちる。日本人の一般的な食事だと、GLP-1中に1日60gを下回る人が珍しくありません。これが1〜2ヶ月続くと、筋肉が目に見えて削れます。階段の3階で息切れする。夕方ぐったり来る。基礎代謝が下がって、「痩せたはずなのに疲れやすい」「やめたら戻った」につながっていく。

そこで今日は、GLP-1中に筋肉を守るための1日のたんぱく質目標量を、体重1kgあたりのg数で整理します。和食の朝、コンビニ昼、夜ごはんまで、具体的にどう組み立てるか。海外のGLP-1ユーザーは何をしているか。2026年4月時点の数字でまとめます。

1日に必要なたんぱく質、一般の基準では足りない

厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020年版」では、成人のたんぱく質の目標量(DG)は1kgあたり1.0g以上とされています。ただしこれは健康な人の維持レベルの話。減量中・50歳以上・運動量が多い人は、別の計算が必要になります。

減量時の目安として国際的に使われているのが、次の数字です。

状況1日のたんぱく質目標出典
一般成人の維持(RDA)0.8g/kgWHO/FAO
日本人の成人目標量(DG下限)1.0g/kg厚労省 2020年版
減量中・50歳以上1.2〜1.6g/kgESPEN 2022、ACSM
GLP-1+筋トレ併用・筋肉量維持重視1.6〜2.0g/kgPrado CM et al, Am J Clin Nutr 2022

体重60kgの女性なら、一般の目安は1日60g。でもGLP-1で減量中なら72〜96gが適正レンジです。80kgの男性なら96〜128g。数字を見て「そんなに食えないよ」と思った方、まさにそこが今日の本題です。

GLP-1は食欲を薬で抑える薬です。「自然に食べられない」状態が続くので、いつもの食事バランスに任せていると、たんぱく質から先に落ちていきます。だからこそ、たんぱく質だけは意識して取りにいく。これが2026年、GLP-1中の栄養の基本姿勢です。

なぜGLP-1中はたんぱく質が特に落ちるのか

理由は3つあります。

ひとつめ、満腹感が早く来て食べきれない。GLP-1は胃の排出を遅らせる薬なので、食事の途中で「もうこれ以上は無理」となります。箸を置いて、ふう、と一息。すると炭水化物より先に、重いたんぱく質(肉・魚)を残しがちなんです。

ふたつめ、固形のたんぱく質が重く感じる。牛ステーキや鶏もも肉が「見るだけで胃が重い」という人、けっこう多いです。冷蔵庫の前で皿を持ってため息。結局、ご飯と味噌汁、パンとコーヒー、うどんだけ、と炭水化物中心の食事に寄っていきます。

みっつめ、食欲が抑えられて総エネルギーが減る。食事量が全体に減れば、たんぱく質も比例して減ります。1日1,200kcalしか食べられない日に、ふつうの日本人の食事比率(たんぱく質15%)で計算すると、たんぱく質はわずか45g。これだと筋肉が確実に削られていきます。

この3つが重なると、GLP-1ユーザーのたんぱく質は意識しないと1日40〜60gまで落ち込みます。体重60kgの人で0.7〜1.0g/kg。国際的な減量時基準の、半分以下です。

STEP 1・SURMOUNT-1が語る「減量の中身」

実際のデータを見ると、この問題の深刻さがはっきりします。

まずSTEP 1試験(Wilding JPH et al, NEJM 2021)。セマグルチド2.4mg(ウゴービ)を68週使った被験者で、体重が平均約15%減りました。体組成のサブ解析だと、実薬群の除脂肪量(筋肉・水分・骨)は約5.3kg減少、プラセボ群は約1.8kg。減った体重のおよそ3分の1が、除脂肪量から来ていた計算になります。

次にSURMOUNT-1試験(Jastreboff AM et al, NEJM 2022)。チルゼパチド15mg(マンジャロ相当の高用量)では、脂肪量が約34%減、除脂肪量も約11%減でした。

特に高齢者がGLP-1で急に減量すると、除脂肪量が偏って失われやすく、サルコペニアが加速したように進む心配があります。日本でもすでに、ウゴービを半年使ってから「階段を上ると息切れする」「握力が落ちた」と話す人が、臨床の現場で出てきています。

脂肪が落ちるのは、もちろん目的どおり。問題は、筋肉が思ったより落ちるという点です。これを補うのが、たんぱく質と筋トレの組み合わせ。今日はたんぱく質の話に絞ります。

1食20〜40g、ロイシン閾値を意識する

「1日の合計さえ追えばいい」というほど単純ではありません。たんぱく質にはMPS(筋たんぱく合成)を起動する閾値があって、これを超える一食を1日3〜4回つくるのが効きます。

MPSを強く起動するのに必要なのが、ロイシン2.5〜3.0g。食品で言うと、高品質なたんぱく質を1食あたり20〜30g取れば、この閾値を超えやすくなります。

食品たんぱく質ロイシン目安
鶏むね肉(加熱)100g31g2.4g
鮭(加熱)100g22g1.7g
ギリシャヨーグルト無脂肪150g15g1.5g
卵(Lサイズ)3個18g1.5g
木綿豆腐150g17g1.4g
ホエイプロテイン1スクープ25g2.8g
納豆1パック(45g)7g0.6g
鯖缶水煮100g20g1.5g
牛モモ赤身100g22g1.9g

注目してほしいのが、ホエイプロテイン1スクープのロイシン値です。GLP-1で固形物が重い日でも、液体ならするっと入る。シェイカーを振ってひと口飲めば、その日はそれでOK。ロイシン閾値を満たすだけなら、ホエイの効率はずば抜けています。

逆に、納豆1パック単独だと7gと少なめ。ご飯のお供として毎朝食べても、それだけではMPS閾値に届きません。納豆+卵+豆腐の味噌汁、あるいは納豆+鮭のように重ねていく発想が要ります。

それと、1日80gを一食にまとめて取るのは効率がよくありません。20〜40gを1日3〜4食に分けるほうが、MPSをその都度起動できて、筋肉量の維持に効きます。

和食の朝、ここがいちばん崩れやすい

定番の和食の朝食、「ご飯・味噌汁・漬物・海苔」を計算すると、たんぱく質は7〜10gしかありません。これで1日が始まると、昼と夜で80gを取りにいくのは、正直きつい。意外と書かれていないんですが、朝に「足す」発想がないと、ここで詰みます。

朝の底上げが、GLP-1中の栄養設計でいちばん効く打ち手です。組み立て例を見てみましょう。

パターンA:和食を崩さずに増やす

  • ご飯1杯(3g)
  • 味噌汁:豆腐+わかめ(7g)
  • 納豆1パック(7g)
  • 卵焼きまたは目玉焼き(6g)
  • 鮭の塩焼き半切れ(11g)

→ 合計約34g。これで朝食からMPS閾値をしっかり越えられます。

パターンB:時間がない朝

  • ギリシャヨーグルト無脂肪150g(15g)
  • プロテインシェイク(25g)
  • バナナ1本(1g)

→ 合計約41g。準備3分。GLP-1で固形が重い朝の、救世主です。

パターンC:コンビニで完結

  • 6Pチーズ2個(8g)
  • サラダチキン(約27g)
  • ゆで卵1個(6g)

→ 合計約41g。朝の電車の中でも食べ切れます。

和食の朝を「ご飯・味噌汁・漬物」のままにすると、ここで30gの差がつきます。1日では小さく見えても、1ヶ月で900g、半年で5.4kg分のたんぱく質供給差。筋肉量を守れるかどうかは、朝でほぼ決まる。そう言ってもいいくらいです。

コンビニ昼、サラダチキンだけで終わらせない

日本のコンビニは、GLP-1ユーザーにとってかなり恵まれた環境です。サラダチキン、ゆで卵、プロテインバー、ギリシャヨーグルト、鯖缶。全部そろっています。問題はレジ前。「これだけでいいかな」と一瞬迷うあの瞬間に、ゆで卵を1個足せるかどうかで差が出ます。サラダチキン1個で満足してしまうのが、よくあるミスです。

サラダチキン(125g、約27g)は優秀ですが、これだけだと食物繊維も脂質も足りません。現実的なのは、こんな組み合わせ。

組み合わせたんぱく質合計
サラダチキン+おにぎり+豆腐サラダ35g
鯖缶水煮+五穀米おにぎり+味噌汁28g
蕎麦+ゆで卵2個+冷奴26g
プロテインバー+ギリシャヨーグルト+バナナ32g

GLP-1中は「胃が重い」日があるので、液体寄りのプロテインバー+ヨーグルトの組み合わせを、食欲が落ちている日の保険として1つ用意しておくと安心です。

おにぎり1個だけでランチを終えると、たんぱく質ベースで見て3〜5g程度。これが週3日続くと、1週間で20〜30gの不足が積み上がっていきます。

サラダチキンと鯖缶と卵は、GLP-1時代の三種の神器です。この3つを冷蔵庫に常備しておくだけで、食欲が急に落ちた日でも1日60gラインを割らずに済みます

夜ごはんは主菜を主役に

夜は家で食べる人が多いので、いちばん組み立てやすい時間帯です。ここで主菜(肉・魚)を100〜150g確保できれば、1日の合計はぐっと楽になります。

GLP-1で夜の食欲が落ちている場合のコツ。「今日はご飯1杯さえ重いな」という晩は、無理に量を増やすより、食べる順番をいじるだけで合計が変わります。

  • 先に主菜から食べる。ご飯と味噌汁を先に入れると、主菜を残しがちです。
  • 鍋・スープ系にする。水分が多いと胃にやさしく、鶏肉や魚、豆腐をまとめて取れます。
  • 脂の少ない切り身を選ぶ。鮭、鱈、鯵、鶏むねは、脂が強い肉より胃もたれしにくい。
  • 量より頻度。200gを1回ではなく、100gを2回に分けるほうが合計は増えます。

主菜の目安を覚えておくと便利です。

主菜たんぱく質
鶏むね肉のグリル150g47g
鮭の塩焼き100g22g
豚ロース生姜焼き120g26g
牛モモ赤身ステーキ120g26g
湯豆腐+鶏つくね豆腐150g+つくね3個34g

夜ごはんで30g以上のたんぱく質を1週間続けられたら、あとは朝と昼で40〜50g足すだけ。GLP-1中の体重60kg女性なら、目標80gをほぼクリアできます。

プロテインパウダー、日本でどう位置づけるか

日本ではプロテインパウダーは食品扱いで、処方も届け出も要りません。薬局やドラッグストア、ネット通販で、誰でも買えます。

GLP-1服用中にプロテインパウダーを使うメリットは、こんなところです。

  • 固形が重い日でも液体なら入る。GLP-1で朝食が取れない日の保険になります。
  • ロイシン量が多い。ホエイは1スクープで2.5〜2.8g、一発でMPS閾値を越えます。
  • 1食あたりの単価が安い。1kg袋で3,000〜5,000円、1回分で約30〜50円。サラダチキン1個より安い。

種類別の使い分けはこうです。

  • ホエイ:吸収が早い。トレーニング後や朝向き。乳糖不耐症の人は、加水分解ホエイかWPIを選ぶといいです。
  • カゼイン:吸収が遅く、腹持ちがいい。就寝前向き。
  • ソイ:植物性で、乳製品がダメな人向け。ロイシン量はホエイに一歩譲ります。

腎疾患がある人は、プロテインの大量摂取が腎臓の負担になるので、主治医に確認してからにしてください。健康な腎機能なら、2.0g/kg程度までは長期の安全性が報告されています

日本でウゴービ・マンジャロを自由診療で処方しているクリニックでも、プロテインパウダーの併用を勧めるところが増えてきました。「薬で食べられない分を液体で補う」という発想が、2026年時点ではかなり一般的になっています。

日本人の現状、平均からどれくらい上げるか

厚生労働省「国民健康・栄養調査」2023年版によると、日本人成人の平均たんぱく質摂取量は、男性 約78g/日、女性 約67g/日です。

体重60kg女性の平均は1.1g/kg。一般の維持基準は満たしています。でも、GLP-1服用中の目標(1.2〜1.6g/kg)には足りません

現状からの具体的な上げ幅を見てみます。

目標レベル体重60kg女性体重80kg男性
現状平均67g78g
GLP-1中下限(1.2g/kg)72g96g
推奨中央(1.4g/kg)84g112g
筋肉量維持重視(1.6g/kg)96g128g

女性は現状から**+5〜30g**、男性は**+20〜50g**の上積みが必要です。プロテインシェイク1杯(25g)と卵2個(12g)で37g。1日の追加としては、この程度で十分カバーできる幅です。

日本で気をつけたい医療制度の現実

少し話がそれますが、薬の処方状況とお金の話にも触れておきます。たんぱく質の計算だけでなく、全体の前提として知っておくと、判断がぶれにくくなります。

ウゴービ(Wegovy、セマグルチド)は2023年3月に肥満症で国内承認、2024年2月に発売されました。ただし保険適用の条件が厳しく、BMI 35以上、またはBMI 27以上+合併症2つ以上を満たさないと、自由診療扱いです。自由診療だと月約2.5〜5万円

マンジャロ(Mounjaro、チルゼパチド)は2型糖尿病の適応です。同じチルゼパチドの肥満症版、ゼップバウンド(Zepbound)は2024年12月に国内承認、2025年4月に発売されました。肥満目的でマンジャロを使う場合は適応外使用(オフラベル)で、自由診療で月約2〜4万円

オゼンピック(Ozempic)は2型糖尿病の治療薬で、ダイエット目的の処方は適応外。サクセンダ(Saxenda、リラグルチド3.0mg)は日本では肥満症で未承認(リラグルチドはビクトーザとして2型糖尿病でのみ承認)。リベルサス(Rybelsus、経口セマグルチド)は糖尿病薬として承認されています。

薬代に月数万円かけるなら、その効果を筋肉の犠牲で払わないのが、いちばん割に合う戦略です。プロテインパウダー月3,000円、鶏むね肉月5,000円の追加投資で、減量の中身が脂肪中心に変わるなら、費用対効果は圧倒的にたんぱく質側にあります。

海外のGLP-1ユーザー、こう食べている

9市場で記事を出しているので、他の国の様子も共有しておきます。同じ薬でも、土台になる食文化が違うと工夫も変わってきて、これが意外とおもしろいんです。

米国ではプロテインパウダー文化が根強くて、朝に30〜40gのホエイシェイクを飲むのがほぼ標準。ウゴービやZepboundを処方する肥満外来は、初診のときにプロテイン摂取プロトコル(1日1.5〜1.8g/kg)を必ず渡してきます。

韓国では、위고비(ウゴービ)ユーザーの間で、日本とそっくりの悩みが出ています。한식の朝食(ご飯・국・반찬)はたんぱく質が薄いので、계란찜や두부を足そう、という啓発記事がSNSで回っているそうです。

中東湾岸諸国(UAE、サウジアラビアなど)はラマダン中の対応が独特です。日没後のイフタールと、日の出前のスフールの2食枠しか取れないので、1食あたり40〜50gをまとめて取る設計になります。スフールにスキル(ヨーグルト)+卵を入れるのが定番だとか。

フランスでは、朝のバゲット+カフェだとたんぱく質が5gに届きません。そこでオムレツ+フロマージュブランへの置き換えが、ウゴービ(Wegovy)を処方するクリニックから勧められています。

英国は2023年3月のNICE推奨で、ウゴービ(Wegovy)が国民保健サービス(NHS)で限定適用に。英国のGLP-1クリニックは、1食20gのたんぱく質+週3回の筋トレを、ほぼ必須プロトコルとして提示してきます。

中国では司美格鲁肽(セマグルチド)の使用が広がっていて、豆腐・魚・卵という伝統的なたんぱく源に加えて、プロテインパウダー(乳清蛋白)の市場が急成長中です。

どの国でも、ぶつかる壁は同じです。「食欲が落ちた状態で、たんぱく質をどう日常に埋め込むか」。日本の強みは、豆腐・納豆・魚・卵。胃にやさしい高品質たんぱく質が、毎日の食卓にもともとある。これを活かさない手はありません。

食欲が出ない日、どうやり過ごすか

GLP-1の用量を上げた週や、体調が悪い日は、食欲がゼロに近くなります。「ふだんの3分の1も入らない」という、あの静かなパニック。そういう日に無理して固形を押し込むと、吐き気がひどくなる。かといって何も食べないと、筋肉が削れる。困りますよね。

そこで優先順位を決めておくと、ぐっと楽になります。

  1. 水分と電解質を先に確保(経口補水液、塩分を足した野菜スープ)
  2. 液体のたんぱく質を1〜2杯(プロテインシェイク、牛乳、豆乳+きな粉)
  3. 固形が入るなら豆腐・卵・ヨーグルト(胃にやさしい順に)
  4. 脂の強い肉・揚げ物は避ける(胃の排出が遅れて吐き気が悪化)

「今日は液体で30gだけ取れればOK」という最低ラインを決めておくと、体調の悪い日も罪悪感なく過ごせます。これが2日続くようなら、次の診察で先生に相談してもいい水準です。

水分は1日2リットルを目安に、白湯・お茶・スープで取ってください。脱水は吐き気を悪化させる、最大の要因です。食物繊維は便秘対策で1日20g以上、野菜・海藻・きのこ・こんにゃくで。女性は鉄分(月経のある年代は18mg/日)、50代以降はビタミンD(1日10μg)も落ちやすいので注意。電解質(ナトリウム・カリウム・マグネシウム)はスポーツドリンクや味噌汁で、自然に取れる範囲で十分です。たんぱく質を増やすあまり、他の栄養素がおろそかにならないように、主食・主菜・副菜2品の基本形は崩さないでおくといいです。

次の診察で聞いておきたいこと

用量を上げるときや、3ヶ月目の経過観察で、こんな質問をすると診察が濃くなります。

  • いまの食事で、たんぱく質は1日何g取れていそうですか?
  • 体重減少の内訳(脂肪か筋肉か)を知る検査は、どこで受けられますか?
  • 筋力低下や疲労感が出たら、用量は調整できますか?
  • プロテインパウダーの併用は、この処方でも問題ないですか?
  • 腎機能の定期チェックは、何ヶ月ごとに必要ですか?
  • 筋トレを併用するなら、いつ始めるのがいいタイミングですか?
  • 減量中に取るべきビタミン・ミネラル(鉄、ビタミンD、B群など)は?
  • 減量ペースが月**3%**を超えたら、たんぱく質を増やすべきですか?
  • やめるとき、たんぱく質摂取はそのまま維持すべきですか?

DXA(二重エネルギーX線吸収測定)という検査で、体脂肪と筋肉の内訳が測れます。自由診療で1回5,000〜15,000円程度。GLP-1を3〜6ヶ月使った時点で一度測ると、減量の質がはっきり見えてきます。

処方・購入前に確かめておきたいこと

クリニック選びや処方条件で、栄養の側からも確認しておくべき項目があります。

確認項目なぜ重要か
栄養指導が付いているかたんぱく質・総エネルギー・水分の具体的指示
体組成測定の頻度DXAやInBodyでの内訳チェック
血液検査でのアルブミン値たんぱく質摂取不足のサイン
筋力評価(握力など)サルコペニア予防のモニタリング
運動指導の併用筋トレなしだと筋肉減少が加速
減量ペースの許容範囲3%以内が筋肉維持の目安
中止時のフォロー体制体重・筋肉量のリバウンド管理

「薬だけ出して毎月再診」のクリニックだと、栄養の話は基本的に出てきません。最初に栄養管理士が在籍しているかを聞いておくと、薬以外の部分で差が見えてきます。

50歳以上とサルコペニア、筋トレ併用の目安

50歳を超えると、たんぱく質の合成効率が落ちてきます。これをアナボリック抵抗性と呼びます。若い頃と同じたんぱく質量では、筋肉を維持しきれなくなるんです。

高齢者を対象にした研究では、1.2g/kg以上のたんぱく質摂取がサルコペニア予防に役立つ、という報告があります。65歳以上で体重60kgの人なら72g以上。GLP-1を50代以降で使うなら、目標を1.4〜1.6g/kgまで上げて、1食あたり30g以上を確保するのが、筋肉量を守る現実的なラインです。

「歳を取ってから減量する意味があるのか」という議論もあります。でも肥満症による心血管リスク・膝関節の負担・睡眠時無呼吸の改善は、高齢者でもはっきり効果が出ます。ただし筋肉を減らさずに減量するという前提が、若年層以上に大事。ここが抜けると、フレイル(虚弱)にまっすぐ進んでしまいます。

それと、たんぱく質だけ増やしても、筋肉は「使わないと育たない」。GLP-1中の筋トレは、週2〜3回で十分です。

  • 週2回の全身:スクワット、腕立て伏せ、ダンベルローイング(自宅でOK)
  • 1回30分:ウォームアップ含めて
  • 6〜10回×3セット:フォームが崩れるギリギリの重さで
  • たんぱく質は運動後1時間以内:吸収が高まるタイミング

ジム通いが難しい人も、椅子からの立ち上がりスクワット20回×3セットを毎日やるだけで、下半身の筋肉維持にはかなり効きます。GLP-1処方クリニックが「筋トレ併用を強く推奨」と明記しているなら、そこは選び方として正解。薬だけ出して減量だけ追うクリニックは、体重の数字は落ちるけど中身が薄い減量になりがちです。


薬に任せて、食事量だけ減るのを放っておく。半年後にはたしかに体重が落ちている。でも残るのは、筋肉が削れた身体です。鏡の前で「あれ、こんなにげっそりしてたっけ」とつぶやく朝。やめた瞬間に食欲が戻り、戻った食事で脂肪だけが先に戻ってくる。GLP-1で、いちばんありがちなリバウンドのパターンです。

1日のたんぱく質を、体重1kgあたり1.2〜1.6g。朝の納豆と卵、昼のサラダチキン、夜の鮭かむね肉、そして食欲が落ちた日のプロテインシェイク。この4つの習慣だけで、減量の質はかなり変わります。

次の診察で「たんぱく質、1日どのくらい取れてますかね」と先生に聞いてみてください。GLP-1を長く続けるうえで、いちばん実用的な質問のひとつです。

出典・参考

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査 2023年」
  • Wilding JPH et al. "Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity" NEJM 2021 (STEP 1)
  • Jastreboff AM et al. "Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity" NEJM 2022 (SURMOUNT-1)
  • Prado CM et al. "Protein requirements during weight loss" Am J Clin Nutr 2022
  • ESPEN guideline on clinical nutrition and hydration in geriatrics (Volkert D et al, 2022)
  • Devries MC et al. "Changes in kidney function do not differ between healthy adults consuming higher- compared with lower- or normal-protein diets" J Nutr 2018
  • PMDA「ウゴービ皮下注添付文書」(2023年承認)
  • PMDA「マンジャロ皮下注アテオス添付文書」(2023年4月承認)

GLP-1薬はすべて処方薬です。服用・注射の開始や中止は、必ず主治医と相談のうえで進めてください。効果や副作用には個人差があります。最新の添付文書はPMDAサイトで確認できます。

参考文献

本記事の事実に関する記述は、以下の一次資料に照らして確認しています。

  1. PubMed Central (NIH)pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11965027
  2. academic.oup.comacademic.oup.com/jes/article/5/Supplement_1/A16/6240360
  3. DailyMed (NIH)dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=adec4fd2-685…

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